法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ひろがるスカイ!プリキュア』第29話 ソラと、忘れられたぬいぐるみ

 ひとりで出かけていたソラ・ハレワタールは、ひとけのない洋館で雨宿りさせてもらう。そこで謎の声が気になって見わたすと、謎のぬいぐるみがあった。
 あわてて帰ってきたハレワタールに対して、虹ヶ丘ましろはそのぬいぐるみは何かとたずねる。ハレワタールの足元に、動かないはずのぬいぐるみがあった……


 守護このみ脚本、野呂彩芳演出。夏の終わりらしくホラーのように物語がはじまり、しっとりした再会のドラマとして終わる。
 しかし、しゃべるぬいぐるみに恐怖する描写が世界観にあっていない。もともとこの作品ではエルという赤ん坊が浮遊したり言葉をしゃべったり、夕凪ツバサも鳥の姿でしゃべったり人間に変身したり、敵も特殊能力で物品を怪物化したり……そもそも別世界から来たハレワタール視点で異世界のぬいぐるみがしゃべっても、意外性すらないのではないだろうか。
 心身ともに強いキャラクターがホラーで最も恐怖することは定番のギャップ演出だが、それを作品世界で成立させるための用意が足りない。せめて虹ヶ丘ましろか祖母が、しゃべる妖精などもいるのにぬいぐるみがしゃべるくらいで驚くの?とツッコミを入れればギャグめいたエクスキューズになっただろうに。
 序盤もひとけのない洋館の雰囲気は良かったし、後半のぬいぐるみの記憶をめぐるドラマも悪くなかったから、ハレワタールを怖がらせるパートは必要ない。しゃべることしかできないぬいぐるみを助けようとヒーローとして奮闘するドラマにしても良かったのではないだろうか。


 作画監督青山充で、近年は珍しくなった完全な一人原画だが、最近に意外で目を引いた第11話よりもアクションに見ごたえがあって驚いた。
『ひろがるスカイ!プリキュア』第11話 気まずい二人!?ツバサとあげは - 法華狼の日記

クレジットは最近では珍しい完全一人原画なのに、アクションシーンが枚数をつかってよく動き、滅多にない魅力があった。怪物の手足がゴムのように弾力的に動き、コミカルなアニメーションを楽しませてくれる。

 今回は東映アニメーションには珍しく、画面奥と手前をカメラが移動するショットを多用して、長回しのアクションとあわせて空間の奥行きをつくりだす。引っかかりの少ない動きが志田直俊原画に近い印象。
 さすがに著名なアクションアニメーターほどに動きのメリハリが面白いわけではなく、演出の要求をていねいに努力してこたえたくらいの印象にとどまるが、それでもけっこう複雑な動きを描き切っていることに感動した。
 もともと青山作画といえば難しい画面も優しい画面も最低限の水準で成立させながら手早く完成させることが特色。1990年代からはスケジュール逼迫を救う必要悪とみなされることが多くなったが、劇場アニメで複雑なレイアウトを多数まかされるくらい難しい画面もそれなりにこなせる技術はある。
 もちろん別スタッフの仕事などもかかわっているかもしれないが、ベテランの余裕ある底力を見られた気がして心地よかった。