法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ひろがるスカイ!プリキュア』第17話 わたせ最高のバトン!ましろ本気のリレー

 ソラ・ハレワタールが体育祭のリレー選手に推薦される。リレーがスカイランドのラルーと似ていることを知ったハレワタールは、バトンをつなぐ選手として虹ヶ丘ましろも選手になることを望む。走ることに苦手意識があった虹ヶ丘だが……


 脚本の井上美緒、演出の畑野森生ともに今作初参加。最初に虹ヶ丘が映るカットからして窓の光で逆光となり、顔も画面上に切れて表情がわからず、物語の予兆としての不穏感に満ちている。物語の本筋に入っても、斜めにかたむいたダッチアングルや不安定なパースで、虹ヶ丘の不安感をあおっていく。
 もちろん特訓シーンは楽しく、初歩的すぎて意味がなさそうなハレワタールのアドバイスで笑わせ、それなりに視聴者にも有用そうな夕凪ツバサのアドバイスで説得力を出す。しかしロングショットを多用して、笑える楽しさよりも空回りしたディスコミュニケーションが起きていることを感じさせる。
 そして予期されたように虹ヶ丘はリレーで転倒するという失敗をおかし、ごまかすように校舎の影へ逃げていく。追いかけたハレワタールが日の光をあびる場所にいて、影に閉じこもった虹ヶ丘とコントラストを生む。しかし虹ヶ丘が失敗しても前を向いて走ったという、ハレワタールのアドバイスを信じた姿に、ハレワタールも救われていたと明かされる……


 梅雨前におこなわれる体育祭という現代的なシチュエーションに、これまで地球の文化を教える立場だった虹ヶ丘が意外な影を見せるドラマを、ていねいな演出で見せてくれた。
 ハレワタールと虹ヶ丘ふたりのむすびつきを描くために無駄な描写はなく、それでいてドラマを構成する基礎として家族やクラスメイトの個性的な出番もきちんとある。
 ただいかんせん、プリキュアとして戦うことがドラマと直接の関係がないことが難だった。一応、リレーのバトンのように必殺技をたくすことで敵を倒すという必然性はあるのだが、ドラマの葛藤は戦闘前の会話で終わっているし、敵の攻撃がドラマと無関係におこなわれ、本筋の完成度が高いだけに戦闘がとってつけたような印象があった。
 いっそのこと虹ヶ丘が敵によって怪物化するとか、せめて虹ヶ丘が校舎の影へ逃げて姿を消した時点で敵が攻撃してくるとか、もっと日常と戦闘をむすびつかせるプロットにできたと思うのだが……
 最終的に虹ヶ丘の再出発が歩きだした赤子エルになぞらえられたり、良い雰囲気に少しの不穏感をただよわせて終わったのは良かったが、今作のプリキュアとしてのフォーマットの弱さを感じてしまった。