法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』空ぶりは巻きもどして/走れ!流しそうめん

「空ぶりは巻(ま)きもどして」は、のび太が野球で謎の大活躍。その背後にはドラえもんのあたえた秘密道具が隠れていた。わずか1%の打率しかないのび太が野球で打てるようになるには……
 中後期原作を、記憶では2005年リニューアル以降で初アニメ化。絵コンテは金子伸吾。
 先週の次回予告で「巻戻し」というフレーズが登場して引っかかっていたのだが、原作どおりスネ夫のビデオテープを視聴する展開で驚いた*1。しかし考えてみるとDVDくらいでは22世紀から見ても古すぎて秘密道具のモチーフになることが不思議だし、むしろ最初に一般家庭で映像の早送りや巻き戻しが可能になった機器としてビデオテープが秘密道具のモチーフになったと考えてみると違和感はない。
 そこで視聴する作品が『うる星ケニア*2というのも、ちょうどノイタミナでリメイクアニメがTV放送されているタイムリーさがおもしろい。

 そしてスネ夫が一時停止やコマ送りするわけだが、そのたびに劇中画面にビデオテープらしいノイズが入るていねいさも良かったし、その後にドラえもんが出した秘密道具で動きを巻き戻すと同じようなノイズが該当キャラクターにだけかかる演出の異化効果がすさまじい。
 物語展開は完全に原作どおりで、特にアニメオリジナル描写はないのだが、すみずみまでこだわった映像がおもしろく新鮮で、最後まで楽しんで視聴した。ジャンルとしてはSFとして古典的なタイムループ物だが、今になってみると、いわゆる「なろう系」でひとつの定番となった回数多めのパターンのよう。その事実を読者や視聴者から隠した状態でのび太が成功する描写を見せて、時間を巻き戻して発端から描いていくというプロットも気がきいている。


「走れ!流しそうめん」は2012年の再放送。あらためて見るとストーリーにそって舞台を変えてアニメとしては手間がかかっているのだが、あまりオリジナルストーリーとして好きではない印象に変わりなく……
hokke-ookami.hatenablog.com

*1:原作は販売前という設定だが、今回のアニメでは「貴重」という形容。

*2:原作の表記は「ケニヤ」。おそらく原作の初出と同じ1984年にアニメ映画化された『少年ケニヤ』を意識したパロディでもあるのだろう。その年は『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』も公開され、挑戦的な作品として話題となった。