法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ロックロックハンマー/よかん虫

アニメオリジナルの前半と、原作のある後半と。


「ロックロックハンマー」は、のび太が答案の隠しかたに悩みながら帰宅すると、高級どら焼きが置いてあった。しかし箱を開けると丸い石が入っているだけ。それは秘密道具によるものだった……
清水東脚本、つくしやまコンテによるアニメオリジナルストーリー。アニメオリジナル秘密道具の単純な機能で見事な展開を見せる。
秘密道具で石化すると、ただつかえなくなるだけでなく形状が変わるので偽装につかえるし、逆にただの石と区別できない問題にもつながる。そこでゲーム機を隠したつもりが、つけもの石にちょうどいいとジャイアンがもっていく展開が皮肉でいい。価値のないものに偽装したからこそ、それを奪われても文句がいえなくなる。
そこからゲーム機をとりかえしにいく局面も、すっとぼけた剛田母とスネ夫のやりとりはさほど良くはないが、のび太が扉を石化して固定したりして切り抜ける展開に工夫があった。
暴力を石化で防御して切り抜ける展開も、秘密道具ごと石化してしまってドラえもんが元にもどせなくなる投げっぱなしなオチがうまい。他の秘密道具をくみあわせれば何とかなりそうと思えるので、ホラーすぎずに笑える。


「よかん虫」は、虫の知らせで嫌なことがおこるとのび太が語り、部屋にひきこもっていた。ドラえもんが無理につれだすと、いつものようなトラブルが起きて、のび太はますます閉じこもる……
予言の自己成就を描いたような原作を、意外なことに2005年リニューアル以降に初のアニメ化。コンテは佐野隆史で、CM直前の遠景ジャイアンをはじめ、なめた構図が多いところが特色か。
オチの一コマでドラえもんのび太をつきはなす台詞のひどさが有名。今回のアニメ化ではそのオチをさらに超えて、視聴者に不穏を感じさせ、ちょっとした悲劇が重なるのがうまい。
ただ良くも悪くも順当なアニメ化をしているだけで、原作以上の驚きや面白味はあまりなかったかな。