「のび太運送はいかが」は野比家の雨どいから水があふれているので、父のかわりに秘密道具で見ることに。のび太のボールを発見し、秘密道具でとりだすことに成功した。それを見たのび太は……
現在は『サザエさん』で書いている城山昇脚本に、まさかの安藤敏彦コンテによるアニメオリジナルストーリー。導入は梅雨時というには少し季節外れか。
もとはリニューアル前の1998年に放映されたアニメオリジナルストーリーらしく、少し前から何度かあった同一コンテで再映像化する試みの一環ではあるが、いったい何年ぶりの登板だろうか。カット割りが細かいところに現在との違いを感じる。
1990年代くらいにしか見ない、スネ夫が堂々とジャイアンに歯向かうところは原作ともアニメともニュアンスが異なり、今となっては違和感がある。一方、のび太に運送を要求する発言しかしないしずちゃんも現在の平均像と異なるが、ドライすぎることで逆に原作のニュアンスが出ていて良い。
そして秘密道具のデザインや機能はドローンや画像編集ソフトを思わせ先駆的。モニター画面をクリックしてアイコンなどをドラッグすることはWindows95ですでに一般化していたとはいえ、現在から見ても違和感がない。
「あいつを固めちゃえ」は玄関におかれたジャイアンリサイタルのチラシを見て、のび太は見なかったことにして外に捨てる。そしてやってきたしずちゃんを2階から見て、そこにあったカメラで撮影すると……
2012年にアニメ化*1ずみの中期原作をリメイク。脚本の酒井健作は作品初参加*2。原作はインターネットの一部で「みなかったことにしよう。」の一コマがLINEスタンプのように便利づかいされていることで知られている。
コンテ演出は大島克也で、キャラクターの視線を利用したカメラワークが面白い。静止した人間に対して見ている人間が動いているコントラストは、玄関先のしずちゃんをトラックバックするカメラワークでも意識的に演出されている。ここ最近に多用されるようになった背景のピントをはずすアニメではひと手間かかる演出を、このトラックバックでつかっているところも目を引いた。
ボールが窓ガラスを割る原作にくわえて、回るバットでドラえもんが叩かれるアニメオリジナル描写も地味にいい。頭がペチャンコになる原作どおりの描写や、ジャイアンを止めるためひどい歌にたえながら進むアニメオリジナル描写とあわせて、ひどい目にあいながら子供たちにつきあうロボットのけなげさが感じられる。ジャイアンの歌にやられる描写として、両親の幻覚を見るスネ夫や日差しをあびるしずちゃんも大笑いした。田中薫作画監督なので動きも全体的に良く、空き地から去る子供たちをひとりひとり手描きで画面奥に走らせていることに感心した。
ただ原作の省略に原因があるとはいえ、高所から飛び降りて地面すれすれで秘密道具をつかって止めただけでは、ふたたび動かすと飛び降りた勢いは同じはず。何か秘密道具の機能を追加するか、止めている間にクッションをはさむ描写が必要だろう。
*1:hokke-ookami.hatenablog.com
*2: 監督作「大仏廻国」「ネズラ1964」最新作「HOSHI 35」など全作のブレーン・脚本監修を担う酒井健作さんが、「#ドラえもん」最新話「あいつを固めちゃえ」で脚本を担当しました!
構成作家らしいが、『トミカハイパーレスキュー ドライブヘッド 機動救急警察』でアニメ脚本経験もある。
とても面白い回なので是非ご覧ください!
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