「台風のフー子」は、しずちゃんが飼っている文鳥を見せられて、のび太は自分も何かを卵から育てて飼いたいと考える。ドラえもんは卵をもっていたが、何の卵かは忘れていた……
2007年に中編アニメ化されたものが2017年の大晦日SPで再放送*1された短編を、早くもリメイク。今回はフー子は原作と同じく目や舌こそあっても雲らしい灰色となり、ファンタジー感を抑えてシリアスな空気を維持していた。
台風が上昇気流を好むことからロウソクの火をあたえる描写は、初期原作ゆえ現在と比べてのび太の頭が良すぎる印象があるが、今回は子供向け百科事典を調べる描写を足して、それほどフー子を大切に育てたいのだと実感させる。
フー子がロウソクの上昇気流を吸うと炎が微妙にのびたり、嵐の風雨が細かい飛沫で作画されていたり、モニターで確認する天気のエフェクト作画がよく動いたり*2、細部まで気をくばったアニメーションに見ごたえがあった。
なおかつペットとの泣けるドラマとして辛気臭いだけではなく、押入れにフー子を閉じこめるため追い出されてボヤいたりするドラえもんで笑いをとって、きちんと息抜きできるバランスにしあげていた。
コンテ演出を担当した森山瑠潮は過去の仕事が見つからず、どうやら若手のアニメ演出家らしい。検索すると武蔵野美術大学でつくったらしいショートアニメが公開されていた。戦前のディズニーくらいのレトロなモノクロアニメを再現できていて、技術的な完成度は高い。
「なんでもアシストーン」は、スネ夫たちのサイクリングにつれていってもらえないのび太のため、つければ動きをアシストしてくれる秘密道具をドラえもんが出す。そして三輪車や台車で追いかけることに……
アニメオリジナルストーリー。脚本の天野慎也は放送作家らしく、ドラマの脚本経験はあるがアニメの仕事は見つからない。木野雄コンテと腰繁男演出で3分ほどの短編にしあげていた。
展開の妙はなく物語としては単調だが、山の上の海が見える公園に向かうことにはじまり、さまざまな遊具に秘密道具をつけて遊ぶアイデアから、海に落ちたかと思えば手こぎボートを楽しむまで、テンポ良く情景が変わっていくので飽きさせない。
のび太が大物を釣った時、ドラえもんが無感動な白け顔で秘密道具を釣り竿につけたり、それでダメだったのでジャイアンが秘密道具を複数つけたりするところは原作らしさも感じられた。
ただ一点、秘密道具のネーミングは「アシストーン」だけで充分と思った。説明するためサブタイトルは現状のままでもいいが。
*1:hokke-ookami.hatenablog.com
*2:日本地図レベルのスケール感なので、もっとゆっくり淡々とぶつかっていくアニメーションに抑えてほしかったが。