法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』テレビ局をはじめたよ/あいつを固めちゃえ

原作ありの短編二本。どちらもしのみやすゆき演出で、ロングショットのカメラ位置が低いところが特徴的。ただし後半のコンテは八鍬新之介が切っている。


Aパートは、大野木寛脚本でしのみやすゆきコンテ。個人がテレビを制作して各家庭へ勝手に配信する、現代のUSTREAMニコニコ生放送を思わせる物語。
原作は、かなり初期の短編、それもドラミちゃんが秘密道具を出すバージョンなので、雰囲気が他の回とは違う*1。今回のアニメ化では原作に登場しないドラえもんが対抗し、別の放送を始める。スポンサーの介入等で現実のTV局を寓話化した原作のプリミティブな日常SFぶりとは大きく違う内容だ。
しかし今回のアニメ版も、視聴数を競って変顔のような短期的な演出に走って視聴者から飽きられていくという別方向で現代的な寓話となっていて、悪い出来ではない。
ちなみに作中のTV番組に甘栗旬が登場したりも。


Bパートは、原島興子脚本で八鍬新之介コンテ。撮影した被写体を静止させる秘密道具を活用するのび太と、ジャイアンリサイタルの恐怖が、微妙な距離感をもって並行して描かれる。
限りなく原作に忠実で作画も良好。その上で、想像力で恐怖をあおる原作のオチに秘密道具の特性を活かしたプラスアルファの恐怖を加えていて、かなり完成度が高い。静止状態での人間の意識がどうなるのかでSF的なツッコミどころは感じたが、ホラーとして許せる範囲。良いアニメ化であった。
しかし改めて見ると、山本弘のような固めフェチが好みそうな秘密道具だな。

*1:ドラえもん』の単行本に収録されているドラミちゃん主人公の話は、もともと『ドラミちゃん』というスピンオフ作品を原作者自らが修正して『ドラえもん』へ組み込んだもの。スネ夫のかわりに「ズル木」というキャラクターが登場するのもそのため。