法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

TVアニメ『僕の心のヤバイやつ』の背景から英語を残してハングルと中国語が選択的に消されたらしい件

 先ごろ放映された第5話に対して、韓国人らしき下記ツイートの指摘が注目を集めている。


뭐가 이상한데 싶었는데 역시 이상하다.

애니에 등장하는 해당 씬의 간판은 다국어표기가 되어있어야 하는데 이상하게 '한글'만 빼놨음 ㅋㅋㅋㅋ
이상하게 좌우 벨런스가 안맞는 디자인을 할 리가 없는데 왜저러지 싶어서 찾아본건데 ㅋㅋㅋ

 手直しせずgoogle翻訳をとおすと、英語が左下にだけ残っているバランスの悪さを指摘している。

何がおかしいのにしたかったのに、やはりおかしい。

アニメに登場する該当シーンの看板は多言語表記になっていなければならないのに不思議に「ハングル」だけ抜かれたwwwww
不思議に左右のベランスが合わないデザインをするつもりはないのに、なぜやりたくて探してみたのかwww

 もともとアニメの背景はどれほど緻密に見えても実景より情報量を少なくしている。上記の比較画像でも、小さな円ふたつのなかの記号や、丸みをおびた正方形のなかの文字は消えている。
 しかしそうした省略が完全に機械的な処理ではない以上、人為的なミスの可能性もふくめて、なんらかの作為による結果なことはたしかだ。
 仮にハングルに対応したフォントがなかったなどの理由があっても、かわりに何かの字があるように色を差して、あるいは英語も省略して、全体のバランスをとるべきだったのではないか、とは感じられる。


 ちなみに下記ツイートの指摘を信じると、第26話らしい原作の該当エピソードでは、アニメと違って小さなコマなのにハングル等も情景から消してはいないらしい*1


原作では実物どおりハングル表記があるのに、アニメでは消されている。
アニメファンに迎合するとクオリティーの低い商品が世に出て作品のイメージが下がる。
今回のが事故でなく今後とも同じ運用が続くなら、この作品の愛読者である俺の立場からもアニメ化自体が間違いだったと言わざるを得ない。

 原作者も脚本に参加したTVアニメ『さくら荘のペットな彼女』で韓国料理の描写が追加された時、原作からの改変自体が批判の根拠とされたことを思い出す。実際には原作から改変したり省略したところは他にもあったのだが。
『さくら荘のペットな彼女』異なる媒体を駆け抜けろ - 法華狼の日記

二度にわたる騒動より、はるかに主題と深く結びついた原作との差異が複数ある。そしてその差異を見ていけば、アニメスタッフは単純に原作を軽視しているのではなく、媒体の変化にあわせて作品を輝かせるため、よく咀嚼していたのだとわかる。もちろん、原作者がアニメ制作へ深く参加していることとも無関係ではないだろう。
ここでは、説明的な長台詞の省略、料理を用いた表現の強化、絵にも描けない美しさを描く困難、文字と映像の叙述における差異、どこに結末をおくかという構成、という五要素にしぼって見ていこう。

 ともかく原作改変自体を根拠としてTVアニメを批判するならば、その方向性においては『僕の心のヤバイやつ』も同じように批判されてしかるべき、となるだろう。
 念のため、媒体の変化にともなう改変は良くも悪くも必然的だと私は考えているので、改変それ自体を批判の根拠にするつもりはない。しかし当時に改変そのものを批判の根拠として、制作者に非難をあびせた人々はどうだろうか。

*1:同じ原作者で同時期の『ロロッロ!』は読んでいたが、『僕の心のヤバイやつ』は完全に未読。