法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』

 宇宙を研究する施設が謎の集団に襲撃された。そこにつとめる女性を救ったのは、銀色に輝く謎のヒーロー。そのヒーローの正体は、かつてシャトルで宇宙へ行った男性ふたりの片割れであり、女性の古くからの友人だった……


 特撮ドラマ『宇宙刑事ギャバン』の30周年を記念して、完全新作で作られた2012年の特撮映画。同年の『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』につづいて初代俳優も客演する。

 実質Vシネマと考えても、残念ながら絵作りが全体的に安っぽい。冒頭のロケット打ち上げが怪作『北京原人 Who are you?』の流用なのはいいとしても、本編の照明がVシネマのようで全体に光が当たっていて画面に奥行きがない。カット割りのテンポがゆるくてビデオスルーの外国C級映画のよう。
 アクションも全体的に弱く、これが映画初主演となる石垣佑磨は格闘ドラマの主演をつとめたこともあるのに生身のアクションが精彩を欠いている。初代ギャバンとして客演する壮年の大葉健二のほうがキビキビした動きに見えた*1。他に見どころがあるアクションはスタントマンでもある人見早苗が演じた女性敵幹部くらい。
 情景もどこかで見たロケ地や殺陣ばかりで新鮮味がない。宇宙での戦闘はミニチュアがないので3DCGにたよって、コピペのような敵兵器を倒すだけで安っぽいゲームのよう。マクー空間はいつものショッピングモールと採石場。敵組織の床は平坦で模様もなく、壁をどれだけそれっぽく飾ってもセット丸出しだ。


 物語もなんだかしまらない。男ふたりと女ひとりの関係性をテンポのゆるい演出でダラダラと見せながら、どの立場のキャラクターもあやふやなまま形式的な三角関係を進めて、どの視点で見ればいいのかわからない。主人公は宇宙の事故で行方不明になってから時間を飛ばして仮面のヒーローとしてヒロインの前にあらわれる。ライバルは同じ宇宙の事故で行方不明になってから正体バレバレの仮面の敵を用意して正体を明かすのは後半に入るころから。トラブルなく視点人物を担当できるはずのヒロインは主人公にもライバルにも記号的な関係性の描写しか担当できないし、あくまで一般人なので主人公の宇宙刑事パートのドラマを知ることができない。
 この物語なら地球のヒロインの存在は削って、男ふたりの友情をドラマの主軸にして、ヒロインはさまざまな情報を見聞きできる宇宙刑事のパートナーに集約したほうが話を整理できたのではないだろうか。冒頭で行方不明になった主人公が知らないあいだに仮面のヒーローになってヒロインを救うというシチュエーションをやりたかったことはわかるのだが、それをやるには尺が足りない。
 一時間半に満たない映画にしては敵が多すぎて各キャラクターの深掘りもできず、どの出番も半端なので倒すことでカタルシスを感じられる強敵として印象づけることもできない。ライバル以外の敵はモブあつかいするくらい、出番にメリハリをつけたほうが良かったと思う。

*1:総集編の感想でふれたように、大葉自身は舞台挨拶で若手の主演をもちあげていたが。 『宇宙刑事ギャバンメモリアル 30年目の再会』 - 法華狼の日記