ここに一本のビデオテープがある。アイドルを追うなかで起きる謎を追っていた女性レポーターは傷ついて入院し、取材しても何も答えようとしなかった。女性レポーターが取材していたテープを再生すると、おぼろげに恐怖が浮かびあがる……
1988年に発売されたVシネマ。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』に十年以上先行するフェイクドキュメンタリーホラーでありながら、現在の定番の演出や構成をほとんど完成させている。
脚本を担当した小中千昭によるホラー演出論、いわゆる小中理論を提示した作品でもある。ただし超常の存在をさりげなく実景にまぎれこませる演出などは脚本段階では存在せず、監督の石井てるよしの仕事らしい。
日常の風景の物陰にモブのように女性がいて、その場では誰も気にしていないカットなどは現在に視聴してもかなり怖かった。ここは『回転』*1を引用した黒沢清演出の先駆か。取材がすすんだごろに過去の映像をふりかえり、スローモーションで謎の女性に注目する描写は、もともと怖くない手法だと思っているが、現在とまったく変わらないところにホラーの歴史を確認する面白味がある。自在なカメラワークで動く「霊」の主観映像を念写として提示しているところはアイデアだ。
あくまでVシネマなので演技がつたないところはあるし、VHSビデオの粗い画質は時代を感じさせるが、景気が良かった当時の日本らしく派手な爆破シーンやおおがかりなセット崩壊などもあって、現在の低予算フェイクドキュメンタリーと比べて映像だけでも満足感があった。
あまりに現在の定番で構成されているため、搾取された女性の怨念といった真相もふくめて、物語自体には驚きがない。
しかし1時間に満たない尺で謎を残しながらも物語にきちんとまとまりがある。女性レポーターを心霊体質にすることで、取材陣をふりまわして事態を動かすだけでなく、その設定にそって真相を台詞で説明してみせた。
劇中アイドルにまつわるネーミングがクトゥルー神話のパロディなところも、いかにも小中脚本らしくて楽しい。
カメラ担当者という設定のため本編ではほとんど映らなかった竹中直人のエンディングでの悪ふざけや、エンディング後に意外な人物の実話怪談がはじまったところも、当時らしい遊びではあった。好みとしてはフェイクドキュメンタリーという枠組みを徹底してほしかったが。
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