法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

妨害行為へ対策した支援団体Colaboの態度を「なにもしません」と要約した某大学教授が、要約批判への「反論」と称して、とにかく妨害行為に屈するべきと主張していた

 先日、支援団体Colaboが妨害活動への対策をせずに東京都へ抗議だけしているかのように京都女子大教授の江口聡氏がツイートしていたので、さまざまな対策をとっていることを指摘した。
裁判所から接近禁止命令をひきだしたりした支援団体Colaboの努力は、某大学教授によると「なにもしません」という態度になるらしい - 法華狼の日記


「安全を確保してください」っていうのに対して「あいつらが悪いから私らはなにもしません、闘い続けます!」とかだったら子供その他をそういうのにまきこむのやめてください、ってなるのが当然で、ぜひそうしてほしい。

 東京都の主張の妥当性を論じるためには、Colaboが選んだ安全確保の手段がどれほど有効かを論じる必要があるはずだ。

 Colaboの対応を「ああいう感じに敵対的な行動」と評するとして、それが本当に逆効果なのか、たとえそうだとしても接近禁止命令などがあれば不要になるのではないのか、むしろ活動中止が暴力の効果を感じさせて新たに誘発する可能性は否定できるのか、そうした当然の推測を江口氏はしているのだろうか

本当にそこまで危険な場所であれば、支援団体のかわりに利用者の安全を確保する必要も出てくる。


 上記エントリに対して、江口氏が別アカウントで連続ツイートで「反論」していた。しかしColaboがさまざまな対策を選んだことを「なにもしません」と表現したことの釈明はどこにもない。


まだ何かからまれている……
ほっておいた方がよいとは思うのですが、自分の名誉と自由な討論による社会の進歩とか(ははは)のためにちょっとだけコメントしとくか。
ちょうど、ペーパーハウスさんという(おそらく暇空さんとは独立の人)がyoutube出してた。
https://www.youtube.com/watch?v=_-qdDdNYd8k
ぜんぶ同意できるかどうかはわからないけど、まあ一つの意見で。

 そのようにYOUTUBEのリンクだけはられても、何の意味があるのかわからない。
 参考資料ならば書名やリンクだけ提示する意味も理解できるし、その参考資料に全部同意するわけではないと留意することもあるだろうが、「わからない」などと江口氏自身がきちんと視聴していないような筆致で提示されても困惑するしかない。
 位置づけのわからないリンクを提示することは、議論において相手に無駄な手間をかけさせる問題につながるし、無駄な情報で文章を読みづらくしてしまう。


法華先生は、あの団体の人が妨害している人一人について、裁判所に接近禁止(正しくは妨害禁止?)を認めてくれるようにしたことをある程度の努力はした、っていうふうに言いたいんだと思うんだけど(「なにもしてないわけではない」という意味で)、
文字通りにはその通りだけど、私はそんなことを言いたいわけではないわけです。

「文字通りにはその通り」と認めるなら、「なにもしません」などという表現をつかわず、妨害に屈するべきと最初から主張するべきだ。せめて今からでも訂正するべきだろう*1
 以降の江口氏による説明を読んでも、危険があるから活動を止めるべきという主張でしかない。その危険の存在はColaboの対策の有無とも是非とも直接の関係がない。


その妨害者のコロアキさんという人に接近禁止だか妨害禁止だか出しても、いろんな人が関心をもってあつまってるわけで、いわゆる迷惑系youtuberもいれば、もっとまじめな人もいれば、ネトウヨ系youtuberもいるわけじゃないですか。
それに、そういうキビしい状況におかれている若年女子がいるとして、人々の関心が集まってるところにそういう人を呼び寄せてるそれ自体にけっこう危険があるわけじゃないですか。
団体の人はさらに、自分たちの持ち場を離れて、その特定されている妨害者を見つけて「キモい」コールとかしてるっぽいし。
そういう危険な運動に、若くて脆弱な人々を呼びよせたり参加させたりするのやめてください、ということです。
「誰が(道徳的に)悪いか」というのはあんまり問題にならない状況というのはあると思うのです。そうじゃなくてとにかく危険を回避するべきときがある。
道徳的に悪い人々や、法的に違法な人々はそれなりに罰を受けるべきだ。しかしそれはあえて危険を誘発して、悪しき人々に罰を下すべきことではないのです。

 江口氏は「なにもしません」とColaboが行動しないことを批判していたはずが、Colaboが行動をしていることを私に指摘された後、Colaboが行動するべきではないと批判しはじめている。表現の巧拙の問題ではなく、主張の根幹が正反対だ。
 Colaboがあえて危険を誘発しているかのようにも江口氏は主張しているが、あいかわらず妨害に屈した東京都の責任だけでなく、警察力強化も無視しているし、暴力に屈するべきと主張すること自体が危険を誘発する可能性も無視している。そもそも後述のように、江口氏は迷惑系YOUTUBERに加担した当事者でもある。
 私がエントリで指摘したように、そもそもColaboが活動していない時でも支援対象者はその地域にいるという事実もうまくくみこめていない。江口氏はどこからどこが安全か危険かをきちんと想定できているのだろうか。


私に(少なくとも表面的な)誠実さが感じられないというのなら、もうすこしちゃんと議論してみてください。
こういうふうに一見まじめそうに反論したりするのも表面的な誠実さを装うためです。

 関係あるようで関係ない話をすることを江口氏は議論と考えているのだろうか。まじめそうとは一見して感じないし、表面的な誠実さをよそおえているとも思えない。


 これほど新宿区役所前の危険性を主張する江口氏だが、そうして活動を止めた危険な動きを「嫌がらせ」と表現した社会学者の橋迫瑞穂氏に対しては、ツイッターの反発に同調していた。


しかしcolaboの件は結局、盛大に嫌がらせした方が勝ちということで、これで溜飲さげてる人たちも多いんだろうけど、自分に万が一があった時に届くはずだった手助けがネットの盛り上がり程度でぶっ壊される現実にいるってことが怖くないのかな。私は怖い。


社会学者の先生がツイッタ民を絶望させているか。まああれを「盛大な嫌がらせ」と見るのは、まあ当人たちから見たら嫌だろうからねえ。

 Colaboの活動を止めることを正当化する根拠として江口氏は「危険」をもちだしていたが、その危険を生みだした「悪意」が批判されることは心を痛めるわけだ。
 そもそも江口氏は、バスカフェの駐車場所をさらすような人物*2へColaboが訴訟をおこなった昨年、「危険引き受け」だからと「あんまり応援できない」ともツイートしていた。


まあ正直なところ、ネットで炎上をくりかえしてアンチやエネミーを生産しつつ、なんか指摘があってもちゃんと対応せず、んでリーガルハラスメントだってんで名誉毀損で訴える、みたいなのはあんまり応援できない。「危険引き受け」だっけか。

 ここで江口氏が「自由な討論」とは書かず「炎上」や「アンチやエネミーを生産」と表現して、「何かからまれている」とは書かず「なんか指摘があっても」と表現していることにも注目したい。
 一貫して江口氏は危険をつくりだした加害者の責任を矮小化して、誘発したとして被害者を責める。そして危険が存在することを根拠に被害者の活動を抑圧させようとして、その危険をふせぐ責任が行政に存在することは無視する。つまりは「自由な討論による社会の進歩」を嫌悪しているのだ……そう解釈できるようにふるまっている自覚が江口氏にはあるだろうか。
 少なくとも、称して危険な状況におかれたことと危険への対策をしないことを混同させる反論よりは、よほど妥当な解釈だと思う。


 ちなみに、江口氏はいつも危険な活動を中止することを当然視したり、挑発を批判しているわけではない。
 勤務時間のツイートなどを理由に解雇された呉座勇一氏が、あらそうために新世紀ユニオンという組合をたよっていた。そこで脅迫状がとどいたと訴える新世紀ユニオンのブログエントリを拡散していたのだ。
呉座勇一氏と北村紗衣氏の和解金をめぐって、オープンレター以上に大変な事態になるのでは? - 法華狼の日記

江口聡氏も拡散に参加していた。誹謗中傷を「皮肉」と弱めて表現しているような筆致は気にならないのか。

 この時の江口氏は新世紀ユニオンの挑発的な筆致は気にならなかったらしく、呉座氏に無用な危険がおよぶ可能性は指摘していないし、脅迫に屈するよう呉座氏や新世紀ユニオンを批判することもなかったようだ。
「道徳的に悪い人々や、法的に違法な人々はそれなりに罰を受けるべきだ。しかしそれはあえて危険を誘発して、悪しき人々に罰を下すべきことではないのです」という江口氏の考えは、差別者が危険を誘発する時には適用されない。
 ついでに、そのブログエントリが注目された要因の記述は不正確で誤解をまねくものだったと判明したが、それを江口氏が問題視したとも、拡散した責任をとったとも知らない。

女性差別の矮小化をはかるエントリなども考慮すれば、オープンレターを批判すべきと考えて動いた人々は、それ以上に新世紀ユニオンのブログを批判しはじめることだろう。

 しかし今回の江口氏は、「道徳的に悪い人々や、法的に違法な人々はそれなりに罰を受けるべきだ」とツイートしたからには、きちんと相応のけじめをつけてくれるだろう。
 倫理学者として大学教授として誠実さを見せてくれると希望をもちたい。

*1:江口氏は複数アカウントをつかい、検索をさけるためかツイートで固有名詞を正確に記述することも少ないので、私が気づいていない別ツイートが存在する可能性はある。以降に引用するさまざまなツイートも同様。しかし、そこまでわかりにくい表現を選んだならば江口氏にも相応の責任があるのではないだろうか。

*2:YOUTUBEのマネタイズがあるため訴訟を歓迎すらしていたこともあり、先述したように「迷惑系YOUTUBER」にもあてはまる。