法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

安田浩一氏が支援団体Colaboに取材した記事を読んで、膨大なデマに抵抗する難しさを感じる

週刊女性』でさまざまなライターが担当する連載「人間ドキュメント」で仁藤夢乃氏の周囲に取材して、4月1日にWEBで公開された。
歌舞伎町でさまよう少女の居場所を作った社団法人『Colabo』仁藤夢乃さん、妨害や誹謗中傷にも“屈しない”生き方「たいがいのことを済ませてきた」 | 週刊女性PRIME
 Colaboが支援団体という立場をさけて当事者性を重視していることや、それが被支援者にとってどのような意味をもつのか理解できる、良い記事だと思う。
 昨年からColaboへ誹謗中傷があいついでいる問題をきちんとまとめた数少ない記事ということも貴重だ。


 これまで他のメディアでは、東京都で珍しく監査請求が受理されたことや、不適切な部分が見つかったという、行政に問題がある事実のみ報じられがちだった。
都監査委員、再調査を勧告 都事業受託した女性支援団体の会計:朝日新聞デジタル

 虐待や性暴力を受けるなどした女性を支援する東京都の委託事業をめぐり、都監査委員が、受託団体の経費計上に不適切な点があるなどとして都に2月末までの再調査を勧告した。4日、明らかにした。都への住民監査請求で「請求人の主張に理由がある」と認められたのは2016年8月以来。

 一方、安田記事は監査請求以外のさまざまな妨害活動にもきちんと言及して、監査請求者に対するColabo側の訴訟が監査請求そのものに対してではないことも明確化している。

 男性はネット上でも仁藤さんたちコラボの活動を「詐欺」「不正疑惑」などと表現。これに同調する者たちが続出した。ネット上を真偽不明の情報が飛び交う。

「女性たちに生活保護を不正受給させ、タコ部屋で生活させている」「女性たちの医療支援に際し、医療機関からキックバックを受けている」「都に不正請求している」

 まるでコラボが公金を横領しているかのようなイメージが流布されたのだ。

 結論から言えば、すべてデマである。仁藤さんは昨年11月、前出男性の主張が名誉毀損不法行為に当たるとして、損害賠償と謝罪を求める民事訴訟東京地裁に起こした。

 ちなみに「タコ部屋」と「医療支援」のデマについては昨年の時点で私も批判したし、そうしたデマは監査請求者への同調者からもその時点では切断処理された。
仁藤夢乃氏の支援団体Colaboの検証をしたいのであれば、無料ピル事業についても一般的な支援事業との比較は必要 - 法華狼の日記
Colaboの不正受給を指摘しようと暇な空白氏が想像したシェアハウス見取り図が、推理小説に出てきそうな非現実感 - 法華狼の日記
 しかし安田記事を読むと、そうしたデマをメディアが批判的に報じて封じることの難しさも感じられる。


 まず安田記事の冒頭から、少なくとも2023年初頭から取材していることがわかる。

 2023年が始まったばかりのある日。時計の針は日付をまたごうとしていた。歌舞伎町(東京・新宿区)がもっとも歌舞伎町らしい表情を見せる時間。仁藤夢乃さんは欲望の臭気に満ちた街路の中にいた。

 中心人物へ接近禁止命令が出た妨害活動*1のくだりを読むと、それなりに長期にわたる取材だったことも確実だ。

 取材を始めて1か月が過ぎたころから、「バスカフェ」の周囲で物騒な光景が展開されるようになった。

「仁藤出てこい!」「税金を返せ!」

 男たちの怒声が歌舞伎町の路上に響く。

 粗雑な「検証」などのデマを流すことは誠実さを捨てれば簡単におこなえるが、そうしたデマをていねいに再検証することには時間も手間もかかる。膨大なデマが流されつづけ、さらに再検証まで時間がかかればかかるほど、一方的な印象がかたちづくられていく。
 それでも再検証によってデマを流した側がそれだけペナルティを受けるならまだいい。そうであれば反論を覚悟して粗雑な主張をする自由も認められるかもしれない。しかし今件などはデマと明らかにされても切断処理するだけで、デマを流された側の悪印象だけが蓄積されていくばかり。
 この問題はColaboのような慈善活動が標的にされた今件だけでない。科学や歴史が標的にされた場合でもよく見る光景だ。