法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』なんでもクレーンゲーム/むすびの糸

「なんでもクレーンゲーム」は、サッカーボールが神成家の庭に入ってしまった。そこでドラえもんが猫のミイちゃんを助けた秘密道具をつかってサッカーボールをとろうとするが……
 鈴木洋介脚本のアニメオリジナルストーリー。
 すでにクレーンゲームは古典的だが、秘密道具の機能からオンライン式のクレーンゲームに近い味わいがある。最初にモニターへ地図を映してゲームをはじめる場所をしぼりこむ描写も、地図をスマートフォンタブレットのようにさわってスライドさせていて自然に現代的な描写となっていた。
 しかしストーリー展開は似たような失敗をくりかえすばかりで、意外性がなくて単調。絵として描かれたクレーンゲームが情景として変化にとぼしいことも良くない。
 逆に対象を捕獲しやすくするためクレーンからトリモチを出す描写は、それができるなら最初からやるべきだとしか思えなかった。そもそもゲームをするために課金する必要がないので、何度でも試行できるので緊張感が生まれない。同じ対象でゲームをするには回数制限があるという設定で危機をもりあげるには、ドラえもんジャイアンの部屋で工夫する比較的に良い描写が不可能になってしまう……


「むすびの糸」は、しずちゃんとつまらない理由でケンカしたというのび太のため、仲直りするための秘密道具をドラえもんが出す。それはふたりを物理的にひきつける機能があり……
 2006年に映像化した原作を、水野宗徳シリーズ構成脚本に小林彩コンテ演出でリメイク。
 見えない糸なら赤い糸ではなく透明な糸では、というのび太のツッコミで笑う。指摘されてみるとそのとおりだ。赤い糸が違う部分や人につながってしまうトラブル展開は、「グンニャリジャイアン*1でも使用されたばかりのキューピットの矢と同じ。
 冒頭の回想に見えたラフな静止画は「いつでもどこでもスケッチセット」によるものだった*2、という演出の珍しさに驚いた。そして原作どおりにしずちゃんと仲直りして帰宅するシーンのつなぎに「いつでもどこでもスケッチセット」を再活用。物語において意味のある描写ではないが、映像表現として流れがスムーズに面白くなった良さは間違いなくある。


「ラジコンのもと」が今回のドラドラMiniシアターで、コンテ演出は森山博幸。ラジコンがドラえもんにぶつかる描写が意味もなくくりかえされる天丼ギャグがシュール。ドラえもんが笑顔のまま後を引かないこともシュールさを後押しする。それがオチのシュールな情景とあわせて今回の雰囲気をかたちづくっている。
 物語や演出として意味が見える描写が好みなのだが、今回くらいナンセンスをつきつめてショートアニメならではのテンポで見せられると笑わざるをえない。負けた。

*1:hokke-ookami.hatenablog.com

*2:カラーとモノクロの違いはある。