法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ネアンデルタール人を救え/のび太もたまには考える

今回の探偵団はドラえもんの変装描写。けっこうアニメオリジナルもしっかり拾っていて、いつものデザインがシュールに変化する楽しみが味わえた。


ネアンデルタール人を救え」は、絶滅したネアンデルタール人を救うため、のび太ドラえもんしずちゃんがタイムスリップ。そこでジャイアンそっくりのネアンデルタール人に出会う……
小林英造脚本によるアニメオリジナルストーリー。死者に花をたむけたり絵を描いたりするネアンデルタール人を心やさしき存在と位置づけ、ジャイアンに当てはめるアイデアが大勝利。さらに数で圧倒するホモサピエンススネ夫がひきいる集団と設定したことで、身体は小さくともネアンデルタール人を排除していった歴史がビジュアルで伝わってくる。日常の関係が逆転した情景そのものが楽しい。
そして新人類の少女として、のび太そっくりのキャラクターを用意。次回予告で見た時も驚いたが、睫毛が長くて前髪を切りそろえて、ちゃんと美少女に見える。その少女のふりをしてネアンデルタール人を奮起させようとするのび太も、これまでの女体化や女装ネタのなかでもトップクラスにかわいらしい。
手袋を足に着けたネアンデルタール人は秘密道具の使用方法がわからないのかと思いきや、そのままジャンプ力をいかして少女を助けようとしたり、本来の身体能力で野獣に立ちむかう。現在の知見を反映させたハッピーエンドを予感させるオチに、途中ののび太の失敗を加味した多段オチも良い。
科学的な興味とキャラクターパロディがうまく融合した、楽しいエピソードだった。


のび太もたまには考える」は、さまざまな能力を入力できる秘密道具が登場。勉強を始めるためマラソン選手の脚力で買い物をすませたのび太だが、秘密道具をさらに活用しようとして……
2009年に映像化*1された後期短編のリメイク。重要回をよく手がける鈴木洋平が脚本を担当。秘密道具のモチーフになったカセットテープは、2年前から世界的に再流行の兆しにあるという。
熱さめやらぬ「カセットテープ」のブーム再来、いまも販売本数は増加中|WIRED.jp
今回は3回PANを使ったり、絵を動かさず葛藤した状態のカットをやや長めにとったり、どことなく出崎演出を思わせた*2。他にも「強い人」のアクションを短いながらしっかり作画したり、ぐっと映像面で向上している。
原作のオチは、深く考えることすら秘密道具だよりという冷徹さがあった。対する今回のアニメ化では、よく考えて秘密道具を返した後、勉強を再開するところまでを描く。思えば今回の秘密道具は能力を補助するだけで、どう使うかは本人次第だ。