法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第4話 みえない地雷

スレッタはプロポーズを拒否し、グエルも口走ったそれを無かったことにする。そしてスレッタの一般的な学園生活がようやくはじまるが、宇宙側のスペーシアンからの地球側のアーシアンへの差別に巻きこまれて……


脚本こそシリーズ構成の大河内一楼が連続して担当しているが、コンテは西澤晋で、メカ作画監督は戸部敦夫と、かなりベテランのスタッフでかためている。
モビルスーツが地雷原を踏破する訓練のため、量産型とはいえ複数の手描きメカが延々と動きつづける映像が珍しい。スレッタの奮闘と挫折を描くためにおそらく3DCGでは用意していない動きをつけるためだろうが、今どき一般的な制作会社ではおこなえないような大量のメカ作画を破綻なく見せたことに感心した。
ガンダムすら出てこない訓練の、それも差別される立場を主人公が体験する地味な物語を許して、このリソースを投入できる制作体制もすごい。


物語としては道具にこっそり細工するという、古典的な学園漫画の定番をガンダム世界に置きかえただけだが、それをやりきったこと自体が良かった。数年前に『機動戦士ガンダムAGE』の中盤に期待して、総集編*1の新作部分でようやく部分的にかなえられたことを、一話つかってやりきっただけでも嬉しい。
スレッタたちに経験がなく、周囲から情報をもらえる状況でもないようにして、同じ細工が再試験でも通用することもつじつまはあっている。アーシアン学生の鬱屈を描くにあたって地球における抵抗運動と公権力の横暴を素直に描いて、中途半端な否定をしなかったことが、良くも悪くも日本のアニメでは珍しい。
ただ、今回はアーシアンにも距離をとられているスレッタがミオリネひとりをたよる展開にしたなら、最終的に再試験に合格する結末にしたほうが一話完結の娯楽としては爽快感が出ただろう、と思った。今回は弱者同士が連帯するドラマを優先したのだろう、とも思うが。