法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦士ガンダムAGE MEMORY OF EDEN』

宇宙空間に巨大居住区を浮かべている時代。謎の巨大ロボット群に襲来された人類は、モビルスーツという名前でカテゴライズした巨大人型ロボットで対抗していた。
その戦争の英雄を父にもち、学園でモビルスーツ部に入っていたアセノは、奇妙な転校生ゼハートと出会い、切磋琢磨をはじめるが……


2011年に1年間にわたって放映されたTVアニメを、第2部の主人公視点で合計2時間半ほどの前後編に再編集し、2013年に販売された。

監督はサンライズ出身の若手演出家綿田慎也に交代し、構成と脚本は木村暢が担当。絵は安定して動いていたが物語は評価しづらかった作品を、順当にまとめなおしている。


前編は、せいぜいED映像くらいでしか印象づけられなかった潜入学園生活を、定番を抽出するかたちで映像化。
高嶺の花として主人公と距離があった少女ロマリーを最初から幼馴染にして、潜入者と関係性をつくるドラマに注力。そもそもロマリーはわかりやすい華があるキャラクターデザインでもなく、学園のアイドルという設定に説得力があまりなかった。

そこから少年少女が仲間となっていく日々を描いて、コロニー外壁に立って少年少女で宇宙を見あげる作品固有の印象的な場面につながった。
しかし、根本的に「本編でやれ」すぎる。もともとTVアニメ本編で同じくらい充実した描写があったところに厚みを増したのではなく、TVアニメ本編では欠落していた描写を埋めたという感じだ。これならば1年間もつかった本編から無駄な話を削って一話分捻出して挿入するべきだったのでは?と思わざるをえない。


後編は、とってつけたような設定が唐突に出ては使い捨てられていた本編から、主にゼハートにとって因縁がある描写を抽出。
TVアニメ本編クライマックスの新キャラ新メカをバッサリ削除して*1、葛藤のなかでゼハートが選択したドラマとして再構成した。ただしこちらの補完描写は充分といいがたく、本編でも不明瞭だったアセムが海賊になった経緯や動機ははっきりしない。状況を動かすのは侵攻を指揮するゼハートであり、組織からはなれて戦うアセムのドラマではなくなった。
ゼハートの心情はわかりやすくなっているし、エンディングは前編を受けた美しい光景になっているものの、良くも悪くも標準的に向上した総集編といったところ。

*1:最終回にいきなり新キャラ新メカが登場してすぐ退場する展開には悪い意味で驚いた。 hokke-ookami.hatenablog.com