法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』かくれん棒/大富豪のび太

 今週から最新話の無料配信を開始。さらにEDとしてひさしぶりに旧OP主題歌「夢をかなえてドラえもん」がつかわれた。歌手はドラえもんたち声優5人が担当して、映像は旧OP複数バージョンを編集したもの。


「かくれん棒」は、水にいれたペットボトルの中身が屈折現象で見えないという実験を出木杉しずちゃんがおこなっていた。嫉妬して屈折したのび太は、屈折で姿を消す秘密道具でイタズラをはじめるが……
 後期原作を記憶では2005年リニューアル以降で初アニメ化。小西富洋と共同作画監督の藤田優奈は前半を担当したとのこと*1
 本体は見えなくなっても50cmくらいある棒が空中に浮いているのに無視する人々が不自然。それがていねいなアニメーションで人間の動作にあわせて動くうえ、真っ白な原作と違って白地に赤を差しているので、むしろ秘密道具そのものは目立つことを目的にしているのでは、と思ってしまうくらいだった。
 秘密道具の細かな機能に矛盾を指摘してもしかたがないが、のび太がもっている答案用紙や雑誌が見えたままなことも違和感がある。それが浮いていることが物語にかかわってくる根本でもないし、ここは別の描写にするべきだった。


「大富豪のび太」は、本のなかに忘れていたお年玉を発見して、のび太が喜ぶ。しかし1万円でもつかうとすぐになくなってしまうことを悲しみ、物価を過去のように極端に下げてみる……
 2010年にアニメ化*2した中後期原作を、水野宗徳シリーズ構成の脚本と小倉宏文監督のコンテで素直にアニメ化。
 秘密道具「もしもボックス」をつかっているが社会観の変化などに面白味はなく、単純に富豪生活を体験してみるだけのストーリー。漫画の値段からすると10万倍くらいの価値と思われるが、10億円ぐらいで劇中のような接待は過剰ではないだろうか。空き地いっぱいに美食コーナーをつくる情景は楽しいが。
 そして最終的にのび太の身柄がねらわれるわけだが、おどす男がフライ返しをもっている意味がわからない。次の自動車で拉致してのガムテープはわかるが、その次のヘリコプターに乗る女性狙撃手でまたわけがわからなくなる。そして雑多な集団がのび太を追いかける止め絵は騎馬武者など、作中のリアリティを完全に無視した描写。世界観に意味もなく反しているのでギャグとして笑う以前に当惑するだけ。監督コンテ回がこれというのがきびしい。


「中身ごとのびちぢみカップ 」は、今回からの「ドラドラMiniシアター」なるショートアニメコーナーでED後に放映。
 特に短いわけでもない原作なため映像のテンポはあわただしいが、柔らかい彩色に一人原画の枚数少な目のわりに魅力的なアニメーションが楽しめた。2005年リニューアル初期のミニコーナーも思い出すが、さすがにそれほど実験的ではない。

*1:

*2:hokke-ookami.hatenablog.com