法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ツルリン!先生がとまらない/大富豪のび太

「ツルリン!先生がとまらない」は冬季オリンピックに便乗したオリジナルストーリー。富永淳一が脚本で、誌村宏明コンテ。のび太カーリングをモデルにした秘密道具「まさつブラシ」を駆使し、家庭訪問に向かってくる先生を止めようと奔走する。しかしまさつブラシは単に摩擦係数を減らすだけで、間接的にしか先生の動きを操れない……
原作で存在してもおかしくなさそうな内容で、時事ネタとして風化しそうな感じもなく、意外と悪くなかった。秘密道具の機能も、それを使う者の目的も明快で、ワンアイディアのシチュエーションコメディとしてまとまっている。まさつブラシの機能上、引いた構図でキャラクターのアクションを映したり、坂道の入り組んだ風景が描かれたりして、いつもより画面が豪華なのもうれしい。
ただ、文字通り顔に文字が出る演出*1演出は好みではない。


「大富豪のび太」は、物価が安かった過去を懐かしむ両親を見たのび太が、自分の持つお年玉一万円を除き、世界の物価を安くする。一瞬にして大金持ちになったのび太は、気前良く散在を始めるが……
ほぼ原作通りの単純な展開だが、一万円札で買い物しようにも釣り銭がなかったり、ドラえもんをドラ焼きで釣って銀行で崩すというアドバイスを得たり、細部でリアリティを担保するあたりがさすが藤子F作品といったところ。ただ、物価が安い時代を回顧する導入部分は、デフレが叫ばれる現在に見ると微妙な感じもある。
コンテ演出は安藤敏彦で、主観映像で引いていくカメラがキャラクターの体を突き抜けたり、面白い演出がいくつか。しかし、大富豪のび太を誘拐しようとする犯罪者達が、どんどん奇妙奇天烈になっていくギャグは……原作の別話で登場する犯罪者が誘拐犯の一組というあたりは良かったのだが。あと、大富豪になったのび太が友人に御馳走をふるまう時、メイド少女に給仕させる描写もアリなのか。


そうそう、前半ではママがこたつでカーリングを見ながらミカンをたくさん食べていたり、後半ではケーキを食べながらドラえもんが物価の説明をしたりラーメンをすすりながらスネ夫が説教したり、今回は食べながら何かをするという描写が多かったな。
演出も脚本も前後半で別だったから、同じような描写があるのは、あくまで偶然だろう。しかし、アニメキャラクターに肉体感を持たせる技法としてなかなか興味深かった。

*1:のび太の内面が顔に出ているとドラえもんが指摘した時、本当に顔に文字で心情が書かれている!