法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ランプのけむりオバケ/ジャイアンシチュー

新年の放送1回目は作画に相応の力が入っている。しかし……


「ランプのけむりオバケ」は、ぐうたらなのび太が、ストーブをつけることすらドラえもんにたのんで楽をしようとする。怒ったドラえもんは、何でもたのみを聞くロボットを出すが……
アラビアンナイトをモチーフ*1にした短編の、寺本幸代コンテによる再アニメ化。2006年のアニメ化においては、主にProductionI.Gで仕事をしているアニメーターの荒川直樹*2がコンテを切っていた。
単行本第1巻に収録されている初期原作だけあって、ギャグが濃くて秘密道具の被害範囲が広い。昔に原作を読んだ時はのび太のたのみは理不尽に思えたが、ロボットに命令をして仕事をさせるという観点からは本来の関係性のようにも思える。
基本的には原作通りで、アニメのアレンジは、トランプから季節ネタのカルタへ変えたところと、オバケをランプに戻すためのサスペンスを少し足していたくらい。オチはのび太が逃げながら謝って終わるが、被害を立ち聞きした瞬間で終わる原作のほうが、後のしっぺ返しを想像させて良かったと思う。


ジャイアンシチュー」は、ジャイアンがみんなに趣味の手料理をふるまうことに。ジャイアンの料理のまずさを知るみんなは恐怖するが、行かないわけにもいかず……
2012年にアニメ化*3した短編のリメイク。前回のアニメ化と同じく、アニメ独自のアレンジをきかせている。
まず、何でも美味しくする秘密道具を使う場面を増やして、まるで飢餓か依存症のように描写。原作通りのオチに説得力を持たせるための改変だと思うが、テイストの異なるギャグが挿入されたことで、ジャイアンシチューの印象が弱まった。
また、秘密道具と普通の調味料を間違えて持って来ていたのび太に、透明になったドラえもんがとどけにくる描写も追加。これは前回のアニメ化に近いが、のび太スネ夫たちを助けようとして失敗する原作とは異なる描写にもつながっている。のび太が自分だけ助かろうとする原作とは異なるアレンジは悪くないと思うし、重装備で助けに来ながら退散するドラえもんの描写も笑えたが、回り道が増えたため急転直下のオチの切れ味がにぶくなった印象もある。
どちらのアレンジも、つじつまあわせの工夫は理解するが、結果として主軸の印象がぼけてしまった感がある。物語作りの難しさを感じた。

*1:「アラビンのランプ」という秘密道具名からはアラジンの魔法のランプを連想させるが、オバケの制御のきかなさは壺の中の魔神のようでもある。

*2:プロフィール

*3:『ドラえもん』ジャイアンシチュー/開店!動物くんれん屋 - 法華狼の日記