法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『デリシャスパーティ♡プリキュア』第21話 この味を守りたい…!らんの和菓子大作戦

華満は好きな和菓子屋が閉店するらしいことを知る。近くに新しいデパートが出店するためらしい。そこでプリキュア仲間を和菓子屋にさそって美味しさをアピールし、店の存続に協力してもらおうとするが……


山岡潤平脚本、西村聡コンテ、藤原未来夫作画監督。前回につづいて、古い物語なら解決につながる行為を、年長者で生徒会長の菓彩が疑問視する。
『デリシャスパーティ♡プリキュア』第20話 あまねのマナーレッスン!憧れのレストラン - 法華狼の日記

安易な作品なら正答として描かれかねない教育を挫折として描いて、より相手にあわせて視点をさげた回答を描くという段取りがうまくいっている。

導入は『ドラえもん』「かがみでコマーシャル」*1や『HUGっと!プリキュア』第29話*2を思い出させる。しかし前回と同じく、個人の善意と奮闘で閉店を阻止する定番のハッピーエンドでは終わらない。
店の考えを確認せずに華満が暴走し*3、先述のように菓彩がブレーキをかける。思えば洗脳されて敵幹部になっていた時期に、華満の両親の店を閉店させかねない攻撃をした立場でもある*4
新型コロナ禍や景気悪化などで思わぬ倒産や閉店がつづくなか、逆に後進に道をゆずって閉店を選ぶことを肯定する物語が描かれるとは予想していなかったし、子供向け作品では珍しい枠組みのドラマとして印象的だった。ラストカットが一般人になった老女がさびしい店内にいるところなのも徹底している。
たしかに高齢化で後継ぎがいないことも個人店の現実だろうし、建物などの償却が終わって年金を受給することで利益を度外視した商売をつづけることはダンピングの一種である。今回のように背筋をのばして終わりを受けいれる物語があってもいい。
かつての常連が閉店前に集まるシチュエーションのおかげで、ナルシストルーが記憶をうばう作品フォーマットもドラマに合致している。ローズマリーが後衛や補佐だけでなく、単身でも怪物と拮抗して時間をかせげるくらいは強いこともひさびさに描かれた。
ただ、そもそも今どきならデパートの出店ではなく、ショッピングモールやチェーン店の進出あたりがリアルなのではないか、とも思った。百貨店ブランドの変更や建物のリフォームでもない、完全な新規の出店が近年どれほどあるだろうか。

*1:hokke-ookami.hatenablog.com

*2:hokke-ookami.hatenablog.com

*3:ただ、一方的な善意だからこそ相手に負担をかけたくないとか、期待させて失望させたくないとか、確認しない理由はそれなりに考えられる。もちろん一足飛びに店を守りたいと語るのではなく、閉店の理由をまず聞くだけで良いのだが。

*4:さすがにそれを思い出す描写はなかったが、逆にいうと今回になかったということは、洗脳時のそれを華満がぶつけるドラマは今後も描かないということだろう。たとえば敵幹部がふたりの記憶を刺激して一種の誘導でもしないかぎり。