法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』宝さがしはバタ足で/三年寝太郎まくら

アニメオリジナルの前半と、再放送の後半と。手洗いうがいを教えるミニアニメがついたが、スネ夫としげおのコーナーも消えた。


「宝さがしはバタ足で」は、おやつ不足が家計の苦しさによるものと知って、のび太が宝探しをはじめる。秘密道具をくみあわせて地中の宝をさがそうとするが……
伊藤公志脚本、鳥羽明子コンテのアニメオリジナルストーリー。原作で別々に登場する「宝さがし機」と「どんぶらガス」を組みあわせ、宝探しをかねた地中探検をおこなう。地中に沈んだ視点や、木の根にひっかかる情景などは良かった。
しかし原作の描写と微妙に整合しない設定が説明されて、あまり感心できなかった。「どんぶらガス」は水より泳ぎやすく、のび太でも自由に動きまわれるくらいだが、地中で呼吸できる描写はされてない。のび太が地中で呼吸できるのに、おぼれないよう浮き輪をつけて泳ぐ描写に違和感しかない。せめて同じ設定で見せたいにしても原作と整合性を崩さないよう、地中の空洞で息つぎする描写などにしてほしい。
展開については、他人が庭に埋めた大金を知らずに掘ってしまうまでは、「宝さがし機」が登場する原作短編と同じ*1。そこから地中の価値ある鉱物を秘密道具が感知していくのは悪くないが、のび太の反応が解釈違いだ。のび太たちには価値がわからない鉱物なら捨てても違和感ないが、黄金でこそなくても千円以上の価値があると教えられた美しい黄鉄鉱なら、ガッカリして不充分と思いながらも捨てはしないだろう。
むしろ原作では、いろいろな秘密道具をつかって少額の対価で商売をするのがのび太だ。地味でも価値のある鉱物を聞きだして、新たに探しはじめそうなもの。そこから地下資源をめぐる理科的な興味をそそる冒険劇につなげれば楽しかったろう。
宝を求めてのび太が地中の深部へ落ちてしまい、結晶がかがやく巨大空洞にたどりついたのも良いが、どう見ても水晶洞窟なのにダイヤモンドとかんちがいし*2、鉱物にくわしい無名のゲストキャラクターもふくめて誤解されたまま話が終わるのがいただけない。ダイヤモンド鉱石は形状が違うし、のび太が人力で折って入手できる硬度ではない。てっきり最後に水晶と指摘されて、黄鉄鉱と同じようにガッカリして終わる天丼ギャグかと予想したのだが……


三年寝太郎まくら」は再放送で、2017年の再リニューアルより少し前にアニメ化されたもの。
hokke-ookami.hatenablog.com
リアルタイムではアニメオリジナルながら好印象だった感想だが、あらためて今見ると作画や色彩に違和感があって、数年しかたってないのに画面が古臭く感じる。

*1:2014年にアニメ化。 hokke-ookami.hatenablog.com

*2:おそらく地下の広大なダイヤモンド鉱床という設定は科学的に嘘ではなくても、ふさわしい資料が見つからず、イメージが近い情景として水晶洞窟をつかったのだろうと想像する。 natgeo.nikkeibp.co.jp