法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』連想式推理虫メガネ/ネジまいてハッスル!

今回は前半に尺をつかい、後半は短くすませてギャグの切れ味で見せるという時間配分がひさしぶり。


「連想式推理虫メガネ」は、スネ夫に呼びつけられたのび太が、さまざまなトラブルを言い当てられてしまう。それを実績として探偵事務所をひらいたスネ夫に秘密道具で対抗しようとするが……
2008年に「迷探偵のび太*1としてアニメ化された後期原作をリメイク。基本的に原作どおりだが、推理の過程で「デブ」や「短足」と秘密道具が自動的に語るギャグは抑制された。
他にドラえもんがどら焼きのありかを推理して真っ白になる場面は笑えたが、展開そのものはきわめて原作に忠実。ややスネ夫に対して手がかりとなる状況説明を長くとることで、本格推理らしい厚みが生まれているし、やきもきして秘密道具にたよるのび太の心情も理解しやすい。スネ夫が不可能犯罪を推理する時間の長さや、一晩かけて見張りながら犯人が登場しない徒労感なども、尺を多く配分したからこそ表現できている。
名探偵が推理することが事件を生みだすという、時間移動SFでは定番なものの、アンチミステリとしてきっちり原作どおりしあげていることも嬉しい。
ただ、秘密道具で推理したイメージが虫眼鏡から煙のようにあらわれる描写は疑問。原作でも微妙な描写だが、はっきり煙のように見せるのならパイプ型の秘密道具に改変するべきだろう。アニメなら、虫眼鏡のなかにイメージがうつっているのをカット割りで見せてほしいところ。


「ネジまいてハッスル!」は、なかなか給食を食べられず、昼休みに遊ぶことができないのび太のため、秘密道具で動きを早くしてやる。さっそく野球で活躍しようとするが……
2005年リニューアル以降に初アニメ化。子供のアレルギーや消化能力を考慮して、無理に完食させない方針にかわりつつある現在、発端の描写に疑問がないといえば嘘になる。
本筋は、コマ落としでキャラクターが動く、アニメーションとしてプリミティブな面白味を素直に映像化。パワフルに土煙をあげて野球場まで走ったり、派手な映像が楽しい。野球の動作もけっこうそれらしい。ただ、もっとスペシャルなアニメーターに全編まかせれば、同じ脚本コンテ演出でももっと魅力的になったかも。