法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』うそつきかがみ/十円なんでもストア

今週は前後とも原作あり。吉田誠と小野慎哉と中本和樹の3人が両方の作画監督をつとめるという、ちょっと不思議なスタッフ構成*1


「うそつきかがみ」は、映した対象を美化して言葉でも煽りたて、自己愛に酔わせる鏡が登場。その鏡の見せる夢に、のび太たちはとらわれていく……
2011年にアニメ化*2した初期短編を、早くもリメイク。もりたけしコンテで、立ちあがるのび太を俯瞰で描いたり、ビジュアルインパクトで楽しませるエピソードらしく絵作りに力が入っている。
2011年では通常の作画タッチのまま美形化していただけだが、今回は頬や唇をブラシ処理して、原作とはまた違った手法で作画タッチを変えている。さらにバシバシ入った睫毛などで過剰に耽美に見せて、あまり美形には見えないわけだが、わかりやすくギャグとして見せるためと理解はできる。
ストーリーは基本的に原作通りで、うまくアレンジをきかせている。ドラえもんが前振りなく室内でボウリングをして鏡を割る展開をそのままアニメ化したことで、自然な展開にアレンジした2011年よりもギャグとしてのキレが増している。そこにドラえもんが必死に鏡を直す場面を足して、のび太がボウリングを投げるのではなく重そうに持って殴り割る描写にすることで、ドラえもんの苦労が台無しになるギャグも強化された。
また、原作ではオチ後の枠外の遊びだったドラえもんの美化を、鏡がドラえもんから逃れる描写として劇中に組みこみ。鏡のやりくちを知っているドラえもんが騙されるのは違和感がないでもないが、劇中で八頭身ドラえもんを見せられた楽しみはある。
「うそつきかがみ」「十円なんでもストア」|ドラえもん|テレビ朝日

のび太が鏡におだてられ、表情をいじくっていく様子を、ちゃんと説得的に描いたことにも感心した。原作ではのび太の背後を見せているだけだが、今回はちゃんと鏡のなかの美男子が表情をつくっていく様子を見せて、ふりかえった場面とのギャップを強調していた。


「十円なんでもストア」は、看板をはりかえて十円玉を入れれば、なんでも出てくる秘密道具が登場。それを使ってのび太しずちゃんと楽しもうとするが……
2005年の声優リニューアル以来、初めてのアニメ化。コンテはパクキョンスンで、さまざまな商品が出てくるエピソードをそつなく見せていく*3
原作と比べてジャイアンスネ夫が秘密道具をねらう局面を大きくふくらませ、看板の残り枚数が少ないことや十円玉がなくなったことをサスペンスに盛りこみ。秘密道具の機能をひたすら楽しむタイプの原作とは、描写が同じでも雰囲気がけっこう違う。
実のところ、アニメオリジナル展開として特によくできているとは思わないが、秘密道具の機能を活用しきってストーリーを転がせていたので、原作と比べて違和感はあまりない。まあ、悪くないんじゃないかと思う。

*1:ちなみに前回の後半もこの3人だった。

*2:『ドラえもん』おぼっちゃマンボ/うそつきかがみ - 法華狼の日記

*3:劇中映画の作画は目を引いたが、以前のスターウォーズパロディ回を参考にしている印象。『ドラえもん』天井うらの宇宙戦争 - 法華狼の日記