法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』身代わりテレビで南の島へ/風をあやつれ!バショー扇

今回は前後とも後期原作をアニメ化。なぜかOP内でドラえもんのび太の会話がなくなり、テロップのみの説明に変わった。


「身代わりテレビで南の島へ」は、のび太が珍しくスネ夫の別荘にさそわれたが、当日に高熱を出して寝込んでしまった。そこでしずちゃんに秘密道具をたくすと……
素直に欲望を描ききる、かなり珍しいエピソード。小型テレビ型秘密道具をとおして、旅行先の風景を楽しむ。途中で手足をのばして人型になり、海中を泳ぎまわったりもする。ジャイアンリサイタルジャイアンの母親に止めてもらうオチまで、秘密道具が失敗にむすびつかない。
いってみれば新鮮味も起伏も少ないのだが、小野慎哉作画監督らしい見事な映像もあって、ストレスがたまらない息抜き回としては良いものだった。


「風をあやつれ!バショー扇」は、さまざまな種類の風を起こす秘密道具で、部屋から追いだしたスネ夫にしかえししたり、しずちゃんと楽しく遊ぼうとするが……
こちらも、のび太は秘密道具で大きな失敗をしない珍しいエピソード。しかえしのつもりでスネ夫に喜ばれるのは原作どおりだが、ジャイアンの手伝いを秘密道具で助けたり、空き地での遊びでしずちゃん以外も参加させたり、のび太の行動が他人のためになる描写を増やしている。それがオチとの落差をいっそう際立たせた。
さらに同日の「身代わりテレビで南の島へ」を思えばドラえもんの懸念も的外れとは思えないという組みあわせの妙もある。原作の方向性をまったく変えず、うまく要所を強化した、良いアニメ化だったと思う。
小柴純弥コンテも初参加の「いねむりシール」につづいて良い仕事。原作から大きくふくらませた空中遊びを空間いっぱいに表現して、実際に遊んでみたいと思わせる情景にしあげていた。