法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season20』第20話 冠城亘最後の事件―特命係との別離

特命係と一課は、警護と称して王隠堂家の監視をつづける。鑓鞍への復讐を止めるために。しかし杉下や一課が睡眠薬で眠らされた隙に、王隠堂家から男二人が姿を消した。さらに糸を引いているのは王隠堂家に残った女性らしいと思われて……


先週*1に続くシーズン最終回SP。サブタイトルにあるように相棒としての冠城が卒業するエピソードでもある。
おまけに予告からは予想できなかった青木の鞍替えもセットで展開。冠城と似た別部署に移り、どちらもレギュラーキャラクターとしては退場するわけだが、必要とあれば再登場しやすい立ち位置でもある。
冠城の物語は、本筋の復讐事件とは関係が薄く、思いつきのように特命係を去る。しかしそれは悪印象ではなく、そうして軽快に卒業することが冠城らしいキャラクター描写となっていた。
暴走する杉下のブレーキ役となる過去の相棒と違って、冠城はアクセル役になるところに個性があった。印象的なエピソードのひとつは、今回と同じ輿水脚本による青木初登場回でもある。
hokke-ookami.hatenablog.com


さて本筋の復讐事件だが、いかにも演技と思われた前回の折檻がやはりそうだったと確定するが、男二人を囮にした女性の復讐劇かと思えばさにあらず。
失敗した八年前の復讐劇の因縁から、「敵味方の陣営」をこえた「交換」殺人*2が炸裂する。古典的なトリックのアレンジではあるが、原則として人間関係が存在しないところで効果をあげやすいトリックなので、今回のような因縁の深い人間関係で使用された前例は記憶になく、意外性に満ちていた。
残念ながらトリックが効果をあげるには本筋と無関係なエピソードが多すぎたと思うし、逮捕された場面で長々と動機を語る湿っぽさは好みにあわなかったが、輿水脚本が時々見せるミステリとしての筋の良さを感じられた。
前回の動画配信を起点に、杉下の命じた徹底的な鑑識と、さりげない伏線から真犯人に目星をつけていく流れもよくできている。

*1:hokke-ookami.hatenablog.com

*2:正確には、「殺人」とは違う部分だが。