「うそつ機」は、エイプリルフールでジャイアンを騙そうとしたのび太がカウンターをうける。くやしがるのび太のために、どのような嘘でも誰もが信じる秘密道具をドラえもんが出すが……
後に原作者が何度もつかったパターンの初期原作を、意外なことに記憶では2005年リニューアル以来の初アニメ化。伊藤公志脚本、高柳哲司コンテ、作画監督は後半もふくめて嶋津郁雄。
絵作りはTVアニメレベルとしては良かった。隕石が落ちるというのび太の嘘でパニックになった群集を俯瞰の全景で見下ろすカットなど、ほぼリピートだがきちんと人物をロングショットで描きわけている。原作通りのオチにつながる、最後の薄暗い食卓を俯瞰で見せる広角カットも良かった。
しかし、せっかくの季節にあわせた初アニメ化なのにアニメオリジナルの嘘を追加したアレンジが多く、その内容も感心できないものばかり。特に終盤の、地球へ隕石が落ちてくる嘘をドラえもんが実現化してのび太に教訓をあたえたのは、映像面では良かったが後期原作らしさが出て印象がブレてしまった。リメイクで追加するのなら良いのだが。玉ねぎの輪っかを特殊なブレスレットと称するのも、騙されるのび太はいいとして、スネ夫ならもっと巧妙な嘘をつきそうな気がする。ただ、自分はオットセイだという嘘をドラえもんが信じこまされた描写は、タヌキではなくアザラシあつかいされるようになる北米版のローカライズを意識したのかも、とは思った。
「泣くなジャイ子よ」は、ジャイ子がなやんでいることをジャイアンから知らされて、のび太とドラえもんが協力することに。どうやら茂手もて夫という少年に恋しているらしい……
2006年にジャイ子前後編の前編としてアニメ化された原作を、単独でリメイク。しかし数話前の「まんが家ジャイ子」*1と同じ内海照子が脚本で、演出だったパクキョンスンが絵コンテにまわって連続性を感じさせる。
秘密道具の身代わりマイクで台詞を別のキャラクターが話すギャグが、アニメでは原作以上の面白味がある。特に前半の会話でのび太が秘密道具を無駄につかう描写を追加して、声優が普段とは異なるキャラクターを演じているかのようなギャグが楽しい。
季節にあわせて公園の桜が散る描写がキャラクターの心象にかさなったり、俯瞰や煽りを破綻しないレイアウトで描いたり、絵作りも全体的にしっかりしていた。ただ、途中のCMに入る直前でタケコプターで飛行する3人を見あげるカットのレイヤーに少し違和感があった。サイズからして、住宅の奥にキャラクターを配置したほうが自然な気がする。
