現在は警察学校で教官をつとめる米沢から特命係へ連絡がきた。線路わきで遺体を発見したという。どうやら不採算路線の存続と廃止をかけた争いが背景にある殺人事件らしいが……
今シーズン2度目*1の岩下悠子脚本。監督は権野元。
観光インフラをめぐる地域の分断という社会派要素もありつつ、まずは鉄道オタクのマニアックな姿で笑いをさそい、鉄道のモチーフに見立てた現場の工作で見立て殺人らしさをもりあげる。
良くも悪くも2時間ドラマのサスペンスを1時間に凝縮し、観光地を架空に設定したような作り。地図をたよりに手がかりをさがす場面や、ホワイトボードに関係者の写真をはる描写など、類型的ではあるが状況を理解しやすくする演出ではある。
オタクの戯画化された描写に、鉄道オタクだけは現在も広く偏見にさらされていることを感じつつ、味方側の米沢も鉄道オタクであり迷惑をかける人々をきちんと切断処理はしている。
観光地を架空に設定したことで、旅情気分をも満たそうとする2時間ドラマでは難しそうな、観光インフラをめぐる地域の分断も描けている。その分断を重視することで、大企業の思惑や地域社会を思う信念なども描かれて、犯人をかばおうとした鉄道オタクが雇い止めされていた設定とドラマとしてむすびついた。
しかし、犯人をかばった鉄道オタクの真意について最後に推理する場面で、感動的なBGMを流した演出には違和感があった。
最初の推理のように応援したい人物をかばうため現場を汚損して殺人の真相を隠しただけでも問題だろうに、殺人事件を利用して社会を計画どおり動かそうとした知能犯だったとなると、あまり正面から肯定すべきではないのでは、という気はする。
そもそも最初から現場が工作されずに真犯人が早々に判明していれば、それだけで地域社会の分断の真相も判明して、たぶん鉄道オタクの意図した結果になったのではないだろうか。
*1:1度目の感想はこちら。 hokke-ookami.hatenablog.com