フランチャイズ弁当店の店長が階段から地下道へ転落死した。その店長は本店のパワハラを受けながら、町内会の清掃も熱心で、間違った若者に説教するような人物として次期会長にと考えられていた。
しかし杉下右京はホームレス殺害事件の現場に落ちていた硬貨から店長とむすびつけ、店長の正義感がホームレスの排除にむかってしまったと推理する。しかしその殺されたホームレスもわけありで……
徳永富彦脚本。この脚本家がつくりあげた人物の再登場は先週の予告映像の時点で示唆されていたが、それ以前に連続する喜劇的で陰惨な殺戮はこのドラマでしか出せない味わいがある。
もともと平凡な2時間ドラマから出発し、どちらかといえばコメディの多いライトタッチなミステリ刑事ドラマとして展開しながら、たまに社会問題に深く切りこんだり、不条理なサイコホラーを展開したりする。
今回に見せられたのは徳永脚本でよくやる、人工的に構築された殺人事件。残されたメモのひとつ「食物連鎖」から事件の構図は早々に見当がつくし、いつもの1時間枠で三つも四つも殺人事件を発生させるので杉下の推理も直感と大差ない。しかし殺人を正当化する虚構を信じた者たちによる、舞台と状況をさまざまに変えた犯罪がつぎつぎに提示され、すさまじくテンポが良い。
犯罪の一幕一幕は社会問題を抽出したような状況や動機も設定されているが、そこから黒幕によってあやつられて安易に人を殺しただけという真相で肩透かしして、犯罪に社会的なメッセージを見いだすことの虚しさを表現したようにも感じられた。制作者の意図したことではない気はするが、真面目に社会問題をテーマにした傑作回も少なくないドラマだからこそ、今回が良いアクセントになっている。