法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 Season20』第5話 光射す

古ぼけたアパートの一室で、後頭部を殴打された若者が首つり状態の死体として発見された。部屋は目張りで密封され、扉も窓も内側から鍵がかけられていたことから密室殺人と思われる。
しかし死亡と同時期に別れた恋人が合鍵を玄関先に置いており、密室ではなかったと判明。とはいえ警官の娘が監禁されているという噂話や、隣室の引きこもり中年男性など、謎めいた状況はつづく……


これまで悪くないエピソード*1を手がけてきた池上純哉が脚本。今回も社会派テーマをおりまぜつつ、複雑な思惑がからみあうプロットでミステリとしても見どころがある。
今回も首つり死体が生まれて現場が工作された経緯が意外と複雑で、次回予告でアピールしていた密室殺人としての面白味こそ弱かったが、謎解きの歯ごたえがけっこうある。常識的には不可能な真犯人の行動を、それをやりとげた人間としての力強さと位置づけ、ドラマへ昇華したことに凄味を感じた。飼育していた亀を管理するためと思われた監視カメラの位置づけなど、先入観がひっくりかえるミステリらしい驚きに満ちていた。
密室に隠されていた真相も見事に映像化されているので説得力はある。特命係でなくても鑑識の捜査で発見されるのではという疑問はおぼえたが*2、それ以前の捜査で見つからなかったことは理解できる。正式な令状を持たず、警官が個人として子供をさがすため家探しした時点なら気づかなくてもおかしくない。
引きこもりの息子が物語の要所で存在感を発揮しつつ、実はメインプロットと平行線をたどって重要人物ではないところも意外で良かった。ヒーローになれないからこその引きこもりというキャラクターは印象的だし、結末で全身をあらわした風貌も他人事とは思えなくて胸にせまった。

*1:hokke-ookami.hatenablog.com

*2:そもそも、鑑識が発見したことを特命係が知らされる順序でも、無理なく同じ展開にできたと思う。