法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

与党が多数を維持する国会で全会一致の付帯決議が野党の責任になるなら、与党から造反が出た消費税増税は全責任が野党にあるという理解でOK?

コロナに対応するワクチンの国内治験に野党がこだわり、それが接種の遅れをまねいたという主張が一部にある。
なぜか立憲民主党の一質疑でファイザー幹部が激怒して、なぜかそれでワクチン供給が遅れたという報道の、背景にアノニマスポストがいる可能性 - 法華狼の日記

AERA記事そのものがワクチン接種を遅らせたとして野党批判をおこなっているのは国内治験にこだわったこと。「立憲や共産党がワクチンの国内治験にこだわり、欧米各国で行われていたワクチンの緊急使用に猛反対したことが接種の遅れにつながっていることは既に知られている」と、6月のAERA記事が参照されている。

しかし野党は国内治験を求めても審議拒否のような強硬な態度に出たわけでもないし、現在の国会で野党単独の意見がとおることなどきわめて少ない。
治験結果をふまえて慎重におこなうという付帯決議は、「小松立騎@9DUTZwxTUPq0UKF」氏が指摘するように全会一致で決まっている。


そもそもワクチンについては「国内外の治験結果等を踏まえ、慎重に行う」という付帯決議が、参院で全会一致で可決されている。全会一致、つまり自民も公明も賛成したものだ。野党だけが国内治験にこだわったせいで接種が遅れたなどとする言い分は、ご都合主義も甚だしい。

自動車の運転にたとえてみよう。どちらが意見を出したにしても、助手席から口を出した側より、ハンドルを握っている側が最終的な責任を負うものだ。いつもは運転手が助手席の厳しい意見にも耳をふさいでいるなら、なおさらだ。


一方、自民党が野党だった民主党政権時代で消費税の増税案が決まった時は、自民党は一丸となって増税を要求し、逆に与党民主党は多くの造反者を出した。
参議院で消費税増税を決めた議員は、民主党より自民党が多かったことは記憶しておきたい - 法華狼の日記

もともと議員数が拮抗していたこともあり、参議院での賛成票は自民党民主党を上回っているのだ。
ちなみに公明党は谷合正明氏が欠席しただけで、反対した議員はやはりいない。

さらに消費税増税の条件として付けられた景気条項は、次の自民党政権で外されて増税にいたった。
その出来事を思えば、ワクチンに対する野党の責任も残念ながら同様の重みしかない。
理由が消去法であれ何であれ政党を選挙で与党にしたことは、その政党に政治の責任を負わせると決めたことなのだ。


そもそも現実にはワクチン承認時期と接種遅れが強く関連したとは思えない。
なぜなら日本がワクチン接種数にのびなやんだのは接種開始前ではなく、その後からだからだ。赤旗記事から引用しよう。
ワクチン接種遅れ 野党のせい!?/公明・創価学会が責任転嫁/政府の購入・供給失敗こそ要因

日本のワクチン接種が大きく遅れたのは、むしろ、ワクチンが承認された後です。日本では、今年2月14日に米ファイザー社製のワクチンが承認され、同17日から接種が始まりましたが、その後、接種は停滞していきました。

 別表は、各国でワクチンが承認され、接種が開始された後の人口当たり接種数を比較したものです。接種開始から「2カ月後」の到達を見ると、日本では人口の1%しか接種が行われていません。それに対し、他国の接種開始「2カ月後」の到達は、イギリス19%、アメリカ11・7%、カナダ2・6%、ドイツ4・8%です。日本の遅れは際立っています。

あくまで日本共産党側の主張だが、否定できる数字はあるまい。さらに記事は先述の全会一致にも言及しているし、供給が足りなくなって混乱をまねいている問題も指摘されている。
もちろん治験の慎重さを求めた野党が接種遅れを批判することには何の矛盾もない。安全を慎重に確認すべきという意見は、安全が確認されたら急げという意見と矛盾するわけがない。