島で静かに時間をすごす夏海たち。秘密の浜辺で泳いだり、長老から洞窟の人魚伝説を聞きとったり。そしてトロピカる部として洞窟へ宝を探しに行くが……
脚本は横谷昌宏シリーズ構成で、村上貴之が演出。メインスタッフ回らしく、敵の怪物化が強化されたり、前回に語られた洞窟でプリキュアの新アイテムが登場したり、敵組織とも対立する別の敵の存在がにおわされたり、仲の良い幹部内でも不穏なふくみが描写された。
とはいえ本編は気楽な冒険回。探検に行った洞窟が観光名所で、入場料もあれば内部に照明がはりめぐらされている肩透かしが楽しい。『大長編ドラえもん のび太の大魔境』の夢を思い出す。
敵幹部ヌメリーも先述の組織内の不穏さとは関係なく、バカンスをかねて南の島まで宝をさがしに来ているので、いつも以上に気楽な雰囲気がただよっている。前回敗退したチョンギーレが、仕事前の約束どおり休暇をもらえている敵組織に驚かされる。いつにも増して人間的にあるべき職場の姿だ。主人公とヌメリーが洞窟で物音におびえ、たがいに意図せず怖がらせあうコメディも楽しい。
今回から敵が強化されて必殺技が通用しなかったが、見つかったアイテムの新必殺技で対抗できた……という展開は安易だが、気楽な雰囲気にあっているので許せる。シリアス回だったら許せなかった。
ただ、南乃島の文化が鹿児島や沖縄を参照しているとは思えず、日本昔話的なイメージを援用している感じだったのは、もう少し作りこんでほしかった。導入で終わったと思わせた主人公の出身地をせっかく連続エピソードでふりかえっているのに、今のところ奥行きが生まれてこない。ちょっと過疎地っぽくて同年代の子供がいないらしいところは、ほりさげると人格形成の背景としておもしろそうなのだが……
作画監督としては珍しく板岡錦が登板。上野ケン作画監督回のように描線の強弱をつけつつ、濃さよりも肉感的な可愛らしさを感じさせる。原画にも入っていて、動きの良いカットも散見された。
胸の谷間や丸みを描かない方向で、セパレートなりに布地の面積が広いなら、夏海の水着でもいいのかという興味深さもあった。第18話*1の競泳水着デザインは、どちらかというと現実の反映と解釈するべきだったか。
しかし入念に全体に手を入れて力を分散するより、TVアニメではここぞという場面で突出したものを見たい気分がある。今回が悪いわけではなく、あくまで好みの話だが。