法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』真夏なのに背筋が凍る!戦慄の瞬間スペシャル

2時間SP。ホラー感の強いサブタイトルだが、実際は危機に対して能天気だったり英雄的だったりする姿が多く紹介された。


シリル・ショーケットという巨大魚ハンターが、メコン川にいる怪物的な毒魚ヒマンチュラ・チャオプラヤをさがす。解毒剤をつくるためだという。淡水魚のエイがいるということ自体が初耳だった。


コンゴ民主共和国では、さまざまなプロレスラーが活躍。ベビーフェイスの覆面レスラーチャンピオンに対して、ヒールレスラーがリング上で鶏をつかった黒魔術をかける。
苦しみもだえるチャンピオンに爆笑して、逆転勝利する姿にまた爆笑した。観客は本気でもりあがっているが、いくらなんでも絵面が気功じみている……いや格闘家が外気功を使ってみせるよりは、ショーアップで呪術をつかうほうが誠実と考えることもできるか。
そうやって能天気な戦いが観客の喝采あびる一方、ギャングがプロレスラーとして活躍している事例もあるという。ひとりのギャングレスラーは手下を「ゾンビ王国」と呼ぶ隠れ里のような場所でレスラーとして育てていた。そうしたギャングレスラーが政治家によるデモ弾圧に動員されることもあるらしい。しかし考えてみれば格闘ビジネスとヤクザのつきあいは日本でも見られたことで、コンゴ民主共和国が特別というわけではないだろう。


米国サウスカロライナ州では、ふたりの青年が手作りの小さな木製ボートで海にこぎだし、サメを釣ろうとして遭難した。
まず離岸流で沖に流されたのだが、ふたりは波に乗って調子に乗ってどんどん進んでしまった。さすがに途中でもどろうとしたが失敗し、錨を下ろすが軽すぎて海底に引っかからない。
それで体力を温存して救助を待つかと思いきや、気持ちを切りかえてサメ釣りを始めてしまう。そこで釣り竿を海に落とす失敗でカンシャクを起こし、クーラーボックスなどの荷物を投げ捨ててしまった。暴れたことで突き指までしてしまう。
もちあわせていた数少ない道具を自ら失って、漂流するしかない青年ふたり。海水を飲むと危険なことは知っていたので口にふくんで乾きをごまかす……かと思いきや我慢できずに飲んでしまい脱水症状を起こす。
四日目に釣り針と糸が残っていたので、指の皮をエサに魚を釣ることを思いつくが、一匹も釣れない。夜間に貨物船に遭遇するが発煙筒などはないため気づいてもらえず、逆に衝突をふせぐため必死にこいで逃げる。
とうとう生きていることが嫌になって、ひとりは五日目に海に飛びこんで死のうとするが、サメはあらわれなかった。もうひとりはクラゲの毒で死のうとするが弱毒性なので食べても問題なかった*1
たまたま漁船にひろってもらって青年ふたりともギリギリで救助。ひとりは一児の父になり、ひとりは消防士になった……
生還したサバイバル物としては異常なほど青年が感情的かつ失敗ばかり。いや異常にマヌケだから普通ならすぐ救助されるような位置でも長期間の遭難になったと解釈すべきだろうか……


シリアでは内戦下の2014年、首都ダマスカスの郊外ダーライヤーで政府軍に抵抗する青年たちが私設図書室をつくった。
攻撃を撮影して外国に向けて発信などしていた青年たちだが、廃墟に残った書籍を集めて、図書室を作りだす。打ち捨てられているとはいえ勝手にもちだしたので、返却する未来のため書籍に持ち主の名前を記載しておく。
そうして戦火のなかで楽しみのない青年たちは好奇心を満たしていき、集まってきた人々にたのんで英語を教えてもらったり、リモートで勉強会を開いたりした。文化が共同体のささえになる光景が美しい。
残念ながらその活動は政府側の退避勧告によって解散をよぎなくされ、青年たちは国外へ散り散りに去り、図書室は政府軍によって高価な書籍が盗まれていった。
それでも一瞬の文化の輝きに韓国映画『弁護人』を思い出せた*2。読書会によって体制が望まない選択肢を人々が知っていく姿は、普遍的なものなのだろう。

ちなみに下記記事によると、政府側でも芸術家とボランティアチームが主導して、経済制裁された廃墟のなかで図書館を運営していたという。
news.yahoo.co.jp

*1:逆にこれで水分補給ができたのではないかと思ったが、その説明はされなかった。

*2:hokke-ookami.hatenablog.com