法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『トロピカル~ジュ!プリキュア』第43話 潜り込め! 深海の魔女やしき!

クジラの超ゼッタイヤラネーダにのみこまれた夏海は、敵組織の拠点近くで脱出。そのまま後回しの魔女に会いに行こうと考える。
一方、アイテムの修復を女王にたのんだローラは、女王自身の人間との関係を聞き出す。そしてプリキュア全員で夏海の救出に向かうが……


第10話以来*1、かなりひさしぶりの上野ケン作画監督。描線に強弱のついた美麗な作画はクライマックスらしさがあるが、絵コンテがけっこう単純なので、作画ほどのスケール感はなかった。
しかし敵地潜入エピソードでここまで緊張感がない作品も珍しい。それも物語や演出が悪いわけではなく、出会う敵幹部が戦いとは別の仕事にかかりきりなチョンギーレや、自室で人形遊びしていて夏海が来ても戦わないエルダだったりして、主人公側と戦おうとする意欲が明らかにない。きちんと怪物をつくって戦いをはじめるヌメリーも、会話に敵意はいっさい感じられない。さすがに上級敵幹部のバトラーが仲間にも隠していた目的を語ってからは雰囲気が変わるが、まだ口先で説明しているだけなのでスケール感はやはりない。
さらに面白いことに、今回ひどいめにあっているのはプリキュアよりもチョンギーレ。自身で戦おうとしたとたん怪物化の解けたクジラに倒されたり、キュアパパイアのビーム攻撃で瞬殺されたり、真面目にバトラーをとがめた瞬間に怪物化されて次回につづいたり。ここまで天丼だと意図的と思うべきだろう。被害者も加害者もせまい関係で終始するスケールの小ささが*2、このまま後回しの魔女という個人のドラマに収束していきそうなところに、意外な構成のうまさを感じた。
ただ、ここまでやるならバトラーの目的は世界を滅ぼすようなスケールではなく、もっと小さなレベルのディザスターにしても良かった気がする。このままだと他の敵幹部は許されてもバトラーだけは倒さないと事態を収拾しづらいだろう。

*1:hokke-ookami.hatenablog.com

*2:第22話の人魚伝説が、かつて女王がひとりの人魚として活動していた時のことと明かされたのも、意外な伏線回収というだけでなく、この作品にふさわしいスケール感という気がする。 hokke-ookami.hatenablog.com