怪獣の研究と管理をおこなう巨大組織モナークは、怪獣の殲滅を主張する軍隊と意見が対立していた。
一方、芋虫怪獣モスラを管理するモナーク基地を環境テロリストが強襲。怪獣の通話を調べる装置と女性研究者の娘を拉致する……
2019年に公開されたレジェンダリー怪獣ユニバース作品で、今回はアジア系のマイケル・ドハティが監督を担当。
土曜プレミアムの地上波初放送で視聴した。2時間40分と枠を拡大し、本編ノーカットでエンディングも一部放映。ただしCMが定期的に入るタイミングがあまり考えられていないようで、ドラマのエモーションが寸断されがちだったのは残念。
映画「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」 - フジテレビ
シリーズ最新作公開記念!ゴジラ、モスラ、ラドン、そしてキングギドラ。怪獣オールスターが勢揃い!日本発、ハリウッド製作の超大作を本編ノーカットで地上波初放送
ビジュアルのリアリティはアメコミヒーロー映画のよう。VFXはあまり精緻ではなく、3DCGアニメのように感じるところもあった。しかし撃ちあい押し負けた側の光線がそれて別の建物を破壊するような、怪獣映画として良い絵が多く、全体としては満足できた。
カラフルなのに黒味が強く、人物の照明や怪獣の発光が強調される映像もおもしろい。まるで教会のステンドグラスのようで、宗教映画らしさをいや増す。
予告で魅力的だったラドン*1はあくまで踏み台で、タイトルとおり二大巨頭の怪獣が王の座をめぐって争う展開が本筋。より人類にとって有益な、調和がとれた状態になるようモナークが介入する。
コンセプトが明確なため、大挙して怪獣が登場しつつ人間同士も立場の変更や対立が多いのに、物語が散漫にならず流れを追いやすい。
人間が怪獣への信仰と敵対と融和の三すくみで争うという展開も、信仰する立場が前半を動かしていくため狂信のようにとらえられがちだが、日本の怪獣作品でも実際は珍しくない。そこから怪獣が人類の手に余ることが確定するにつれて敵対という一般的な選択肢が脱落し、どのような調和を目指すかという選択肢の争いになっていく。そこで敵の敵としてゴジラと人間が共闘するのはシリーズの定番ですらある。
逆に、シリーズを知りつくしているだろうからこそ、シリーズの印象をぬりかえるような新しい絵も多い。初代のクライマックスを中盤で反転することが人類の希望につながったり、モスラとゴジラが共闘して他の怪獣全て敵という片方なら定番でも両方は皆無な対立構図をつくったり……
予告などでにおわせていたように女性科学者は裏切っていたが、予想よりも明かすのが早い。それも息子が怪獣災害で死んだ苦しみから目をそむけるためという動機が明らかだ。ところどころ『風の谷のナウシカ』を連想したが*2、思っていたより普通の人間だったし、最終的に米国映画らしい家族愛で終わった。
むしろ環境テロリストのほうが思想犯として強固で、終盤でもあえて女性科学者の敵対行動を見逃したりと、物語の都合だとしても奇妙に器が大きい。いっそのことリーダーをキリストやラスプーチンを思わせる宗教家らしい風貌や服装にすれば、もっと環境テロリストの印象が増して結末の印象が強くなったかもしれない。
いずれにせよ、怪獣映画の定番をふまえているだけでなく、意外と理知的な構成の作品だった。
同時に、それでも狂信がにじみでる怪作だからこそ、恐れおののかざるをえなかったが……
*1:hokke-ookami.hatenablog.com
*2:影響下にある特撮ドラマとして『ウルトラマンコスモス』も思い出した。