法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ゴジラvsコング』

 バーニーはフッ素が混入されているとして水道水を飲まない陰謀論者だった。バーニーは匿名で陰謀をあばく配信者をつづけながら、4年をかけて大企業エイペックスに潜入し、謎の機械を目撃する。
 一方、組織モナークの研究者アイリーンはコングを隔離保護しようとしていたが、限界がきていた。そこでエイペックスに支援されるかたちで地底にある怪獣の故郷へ行こうとするが……


 2021年にモンスターバースシリーズ4作目として公開された米国映画。監督は低予算ホラー映画の類型にさまざまなアイデアを足しつつ娯楽として完成させてきたアダム・ウィンガード*1

 まず人間ドラマは、いかにもな大企業の技術開発が怪獣という災害を呼びよせるという類型ではある。しかし極まった陰謀論者の主張が現実だったという、リアリティの低いアメコミか怪獣映画でしか許されない展開が良くも悪くもすごい。
 すでに怪獣が何度も全人類をおびやかし、対抗する超技術も開発している世界観なので、作品全体のリアリティも低い。良くも悪くも『VSゴジラ』シリーズと大差ない。実際、後半に明かされる超技術の背景も『ゴジラVSキングギドラ』への意識的なオマージュではあるかもしれない。

 一方で怪獣ドラマは悪くない。タイトルになっている両雄どちらにも華をもたせつつ、モンスターバースの過去作品*2で見せた個性が勝因になるという終盤の流れは綺麗だった。
 今回のゴジラはよく考えると人間を蹂躙しているだけだが、人間から見て嫌悪感をいだかせず一種の味方と感じさせるところも『VSゴジラ』シリーズのようで、なおかつ格段に説得力がある。


 序盤はフォトリアルな3DCGアニメのようで、実写怪獣映画として楽しむには質感がつらかった。遠景がクッキリ見えすぎていて、空気感がなさすぎる。コングの突然の行動からアンリアルな映像は意図的だろうとわかるのだが、そこから見せる全景にしてもあまりリアルではない。最後までVFXはレジェンダリー大作らしく大味だった。
 ただし終盤に都市部にうつってからは楽しい。同じ香港決戦でも予算のためか暗いナイトシーンばかりだった『パシフィック・リム*3と違って、闇夜を横切るゴジラの熱線を背景にビルからビルへとびうつるコングや、朝焼けで空が白くなりつつある薄暗い都市でなぐりあうゴジラたちなど、時間経過とともに変化する情景にあわせて素晴らしく多様な怪獣描写を見せてくれた。