法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 Season19』第20話 暗殺者への招待~宣戦布告

IT長者を標的にするよう殺し屋をやとったと女性が警察に告白。前金をうけとるホームレス姿の写真が内調から出され、特命係は捜査をつづける。
どのように殺し屋をやとう大金を入手したのか、殺し屋はいったい何者なのか。一方、IT長者は警護に守られつつ、のん気にパーティーしていた……


放映枠を拡大した前回につづき、今回も枠拡大。実質2時間半以上の大長編スペシャルになっている。
まず前回に懸念をもったポイントが前半でうまく解消されて、かなり楽しんで見ることができた。
『相棒 Season19』第19話 暗殺者への招待 - 法華狼の日記

義母娘のやりとりで、手紙をつかった暗号がしかけられていることが見え見えで、その難しさも児童向けのなぞなぞレベル。それに気づいてなさそうな女性弁護士が、ただの設定倒れに見えてしまう。
種があからさまで幼稚な手品を見つづけることほど退屈なことはない。マギー司郎のようにそれを逆手にとったどんでん返しを期待したいところだが……

冠城が弁護士の頭脳を挑発して、手紙にそれとなく言及したところ、弁護士は怒りを抑える。弁護士が実際には暗号に気づいていたことを、こうひねって明らかにしてみせるとは期待していなかった。
約束手形をつかって賄賂をおくる手法も、身元を隠して普通郵便で大金をやりとりしたことを取り調べで明らかにした後、不渡りにして大金をはらわずにすませられることを説明。さらに後半で手形の手法の中心人物として脇役と思っていた人物が指摘される*1。ひとつの手法から多様な背後関係を描いていくおもしろさがあった。


さらに、平凡な女性が殺し屋をやとうというリアリティに欠ける状況設定も、実際には殺し屋をやとえていないと杉下が推理して、IT長者は事故のようなシチュエーションで死ぬ。
七輪をつかった餅焼きパーティー一酸化炭素中毒というマヌケな死も、IT長者の護衛に対する無茶ぶりが先に描かれているし、真相から考えるとIT長者が油断したことも自然だ。
疑問だったIT長者の器の小ささも、警察上層部の不自然な動きも、特命係に流される情報に隠された意図も、真相で一定の説明がつく。
今回に明らかになった真相をそのまま描いたなら別だが、前回の結末から示された殺し屋設定よりは相対的にリアリティがあることで、意外性と説得力が両立していた。


シーズン途中でキャラクターが熱血漢に無理やり変えられた刑事部長も、そのおかしさを周囲に批判されつつ、デュープロセスを重視しつつも杉下をサポートする良い役割りに。
今回の事件につながる今シーズン初回の銃撃事件で初登場した出雲も、社美彌子に異様な激情を叩きつけたかと思えば、自覚的な愚痴の一種だったとすぐ明らかにする。
いったんリアリティレベルを落としておいて、相対的にリアリティがあってスケールの大きな真相を用意。そんな期待値を落として満足感を高める手法が全体的に効果をあげていた。

*1:IT長者のキャラクターから違和感あったのだが、それも伏線だった。