東映で作画監督とのトラブルから仕事を失ったという演出家に対して、まず会社は団体交渉の席についてほしいという署名がおこなわれている*1。
ネット署名 : 東映アニメーションはパワハラ・イジメを止めろ!
私の出したカメラアングルの指示について、絵を描いた年配の作画監督から突然叱責を受けたことがきっかけとなり、あっという間に職場から居場所を失ってしまったのです。
業務委託契約、いわゆるフリーランスのスタッフでした。しかし、彼は東映アニメーション100%出資の子会社に入社し、東映の作品だけをずっと何十年間も担当し続けてきたにもかかわらず、東映と直接契約を結んでいないのです。会社はその作画監督がフリーランスであることをよいことに、1カットにつき安い出来高の仕事を大量にこなすことを求め、彼は丁寧な仕事などできない立場で生活のためにたくさんの仕事をさせられてきたのです。彼のご機嫌をとり、とにかく数をこなしてもらうことで、安く大量に仕事を回していくのが会社の思惑です。
差別を容認し、業務委託のスタッフはおだてて仕事をさせるのが社内の不文律でありタブーです。仕事から外された私に対して、上司は個別面談で「騙して使え」や「働きバチが必要」などの発言をしていました。
2年前に仕事ができなくなった演出家や、子会社で作画監督を東映作品ばかり何十年もつづけているアニメーターなど、ある程度まで個人が特定できそうな情報が出ている。
また、ユニオン側のLGBT当事者が通称をもちいたことを偽名あつかいして団体交渉を拒絶したという、信じられない問題も語られている。そこは会社もすぐ謝罪できるだろうし、するべきだろう。
ちなみに東映アニメーションといえば、約1年半前に東映労働組合の要求をのんで、雇用形態を改善したことが報告されていた。そこで2015年の新社長が改善に動いているという伝聞もあった。
東映アニメーションが社会保障のついた契約社員制度を導入したとの報 - 法華狼の日記
実際に2018年の映画『ドラゴンボール超 ブロリー』で長峰達也監督が、負担の大きくスケジュールが厳しいはずの劇場作品でありながら、きちんと帰宅できるアニメ業界で珍しい現場だったことをインタビューで語っていた。
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署名を求めるページにも下記のようなアニメーターもいることが報告されている。トラブルのあった作画監督との待遇差別として批判されているが、あるいは新規採用は改善できても、さかのぼって手当てができていない問題ということかもしれない。
社内には新卒で採用され、同じようにアニメーターとして働き、直用契約社員として、保険や年金、賞与、定期昇給も得ている、出来高ではないアニメーターのスタッフもいます。
また、署名によると東映社内労組や他の組合が会社に懐柔され、プレカリアートユニオンだけが演出家によりそって交渉をおこなっているという。いろいろ思うところはあるが、戦う選択肢が増えているだけでも状況は前に進んでいると考えたい……
*1:引用時、改行を排した。