法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

実在人物を漫画化してキャラクター化するということ

比べることで興味深さをおぼえる発表がたてつづけにあった。
ひとつは先日に国家擬人化コンテンツ『ヘタリア』の再始動が発表されたばかり*1日丸屋秀和による『総理倶楽部』。

もうひとつは『プリキュア』シリーズの漫画版や、『ひみつのアッコちゃん』のリメイク漫画で知られる上北ふたごの『アンライバルド NAOMI天下一』。

作品以前の話として、たとえばスポーツ選手がCMに起用されることが多くても、なぜ政治家がCMに起用されることが少ないのか。もともと誰に向けて何を伝えることを前提とした作品なのか。そうした違いや共通点について考えずにいられない。


念のため、どちらも実際の作品はまだ発表されていない。
『総理倶楽部』は日本国内に範囲をせばめているので、さすがに『ヘタリア』に比べれば悪影響は広まらないだろう。読者が知っている歴史を題材にしているだけ慎重になるだろうし*2、初代の伊藤博文からして植民地政策とテロリズムの史実を直視すれば美化にも限界があるはずだ*3
たとえば、殺人が禁忌とされる通念が強固な社会ほど、逆に虚構における殺人描写の配慮が必要なくなっていく。同じようにキャラクターの美化が明らかであるほど、モデルとの違いも浮かびあがっていく*4。もちろん、キャラクター化すること自体が、フィクションとモデルの明らかだった距離感を少しずつ見誤らせていく危うさもあるが*5
逆に『アンライバルド NAOMI天下一』については、どれほど個人の言動がすぐれていようと、全人格を英雄視するような作品であれば好ましく思えない*6。幼年誌向けの実在選手漫画の傾向を思えば、良くも悪くも教科書的で偉人伝的な作品になるだろうが。

*1:hokke-ookami.hatenablog.com

*2:二重三重の希望的観測にすぎないが。

*3:hokke-ookami.hatenablog.com

*4:hokke-ookami.hatenablog.com

*5:その観点ではこの映画がよくできていた。hokke-ookami.hatenablog.com

*6:もちろん大阪なおみ氏にかぎったことではないし、この英雄忌避感にもまた問題がありうるが。 hokke-ookami.hatenablog.com