現代忍者による妖怪退治ファンタジー漫画を2023年にTVアニメ化。原作者は『To LOVEる』で知られる矢吹健太朗で、『週刊少年ジャンプ』から『少年ジャンプ+』に移籍して最終回をむかえるタイミングにあわせるように放送された。
監督は『バクマン。』の秋田谷典昭がつとめ、制作会社はSILVER LINK.からいったん独立して後に吸収されたCONNECT。
内容としては性転換や女体化を主軸にしたフィクション、いわゆるTSFジャンルの目立った2023年のTVアニメ作品のひとつ。しかし1月から放送されたものの新型コロナ過が直撃し、制作遅延から放映が中断され、7月からあらためて全話が放送された。
そのため映像ソフト第1巻が発売された時点で制作状況がかなり厳しかったらしく、再放送でフォローするサービスとして原作者の発案でアニプレックス側の司会と原作者だけが登場して、アニメスタッフは参加しないという珍しいオーディオコメンタリーが収録され、音声特典にもなっている。
性別を題材のひとつにした『ダーリン・イン・ザ・フランキス』で仕事をしたことが『あやかしトライアングル』のアイデアにつながったという逸話など、それなりに興味深い情報が語られていた。
TVアニメとしての制作状況の厳しさは映像ソフト版からも感じられる。キャラクターデザインからして、エロスの強化で評価が高い2期以降のTVアニメ版『To LOVEる』と比べて、むしろ絵柄は原作に近いくらいだが、ちょっと瞳が大きめで頭身が低めで内容のわりに低年齢向けな雰囲気。
さすがに第1話はアクションもエロスも標準的なTVアニメだが、これも前半ずっと舞い散る桜はデジタル素材をそのまま使っているかのようで安っぽい。クライマックスまでは和風バトルコメディを順当に映像化してジャンルを隠しているのに、OPで主人公の女体化姿を先に見せている構成も残念。第1話はEDがなくて本編にスタッフクレジットがかかる作りなのだから、もしOPが先に完成したのだとしても第1話はEDとして流せば良かったのではないか。とはいえ第1話自体は、実際のジャンルを隠しているからこそ、ライトな忍術アクションに直球のヒーローとヒロインの物語を重ねる直球の王道ぶりが逆に珍しく、気楽に楽しめたところがある。
第2話からは、作画監督として下請け会社がクレジットされるスタッフ不足作品でありがちなパターンで、映像ソフト収録版でさえ作画が甘い。全身フルショットが多いわりにスタイルが崩れがちだし、メインキャラクターの横顔などの作画修正も甘い。アクションもけっこうしっかり動かしているからこそ、『鬼滅の刃』の大ヒット以降のジャンプ系列アニメの全面的な映像ハイクオリティ化のなかではリソース不足が感じられた。風呂場やそこからあやかしを全裸で追撃するような要所の作画はがんばっているし、十年前のエロコメアニメと比べれば水準以上の作品にはなっているのだが。
さすがにコロナ過をのりきった後のクライマックスは回復し、第11話のアクションや最終話のエロコメ描写など要点の作画はそこそこ見られるが、やはりジャンプアニメのハイクオリティ化の潮流のなかでは頭ひとつ落ちる。
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