法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ヘタリア』がコンテンツとして再始動するらしいが、擬人化日本の受容を見てもう限界だと思った

アニメなどのメディアミックス展開は2015年が最後だったところ、10月22日に原作者が告知ツイートしてファンが喜んでいた。

しかしアニメ展開がはじまった2009年*1と比べて、ファンからも難しさを論じる動きが出て、批判が広がっているようだ。
たとえば擬人化韓国が一方的に海底トンネルを掘りたがり、擬人化日本が迷惑がる4コマ漫画が批判されていた。もともと海底トンネルは日本の政治家が推進連盟をつくったものだ*2


そうした他者のコンテンツ化とは異なる問題もある。すでに多くの疑問がぶつけられているらしいツイートをとりあげるのは心苦しいが……

国全体を擬人化した日本産のコンテンツゆえに、「恥ずかしがり屋で控え目なお人好しな性格」*3「かわいいけど心は誰よりも男前でかっこいい!」という説明は日本人の自己認識になってしまう。
これを読者が魅力と評して宣伝していることに気恥ずかしさをおぼえる。本当に恥ずかしがり屋で控え目なら、このような設定は作るまい。謙虚な性格と自己紹介する人は謙虚ではない。
より多くのファンで書いているだろうピクシブ百科事典でも、同じような説明がされている*4。けして一個人がファンとして暴走したわけではない。
本田菊 (ほんだきく)とは【ピクシブ百科事典】

一見するとミステリアスだが、実は感受性豊か。親切で優しくお人よしな性格。世間知らずで天然だが、本人は常識人のつもり。慎み深く羞恥心が強い。少々自虐的な傾向あり。仲間は何より大切にするし情には厚い。


もちろん日本のサブカルチャーをふりかえれば、多国籍キャラクターのなかで日本人が主人公となる作品は珍しくない。近年までメディアミックスがつづく『サイボーグ009』が一例だ。

だが少なくとも、日本人が主人公というだけでは、日本全体の自己認識と主人公が同一になるわけではない。『サイボーグ009』は主人公009をふくめて社会から疎外された者ばかり集められ、それぞれが国家を反映しても平均ではありえない。
それでも登場する多国籍キャラクターに反映された偏見が作品の欠点となり、封印されたり改訂されることはある。『サイボーグ009』でも黒人の008は原作者自身がデザインを変更し、白人の002は近年のメディア化で極端な鷲鼻ではなくなっている*5


1994年放映の、巨大ロボットの格闘競技で世界代表を決めるアニメ『機動武闘伝Gガンダム』も、各国*6を代表するロボットは極端に文化が誇張され、当時から「国辱ガンダム*7という批判があった。

機動武闘伝Gガンダム

機動武闘伝Gガンダム

  • メディア: Prime Video

さらにネオジャパンの主人公が乗るロボットのひとつが「ゴッドガンダム」で、外国では「バーニングガンダム*8に改称されることとなった。

しかし「ゴッド」は主人公の父が先につくって大問題となった「デビルガンダム」と対になるネーミングであり、その諸悪の根源がネオジャパンであったことも最終的に明かされる。

内容には細部から全体まで批判はあっておかしくないとは思うが、とりあえず日本を特別に称揚しないよう注意はされていた。


そもそも長所や短所の基準は文化によって異なり、外国人を賞賛したつもりで気分を害してしまうことはある。逆に自国については、へりくだる時も耐えられる範囲にとどまり、自己批判のつもりでも限界はある。
多国籍を反映したキャラクターをつくるなら、その国全体の象徴にしないワンクッションをはさむのが無難だし、自国は意識的に短所を強調しなければ諸外国とのバランスが崩れやすい。
そうした工夫だけで問題がなくなるわけではないが、タイトルからしてイタリアを笑うようコンテンツ化した『ヘタリア』は根幹から無理があった。

*1:当時に漫画の簡単な感想を書いたこともある。hokke-ookami.hatenablog.com

*2:hokke-ookami.hatenablog.com

*3:ここで「日本らしく」と表現した時点で、フィクションの枠にとどまらず、「今井@imai_aph」氏の日本認識になってしまっている。

*4:なお公式サイトの説明では、「空気を読むことと遠慮することが特技の物静かで真面目な青年。ミステリアスに思われているが本人は至って普通のことと思ってる。」が全文。http://hetalia.com/twt/images/chara_japan.png

*5:http://www.ph9.jp/images/cyborg002-jet.jpg

*6:ネオを冠する国名で呼ばれ、ネオチャイナとは別にネオホンコンがあるように、当時の国家をそのまま延長したわけではない。

*7:半公式的な漫画アンソロジーMS Saga―Mobile suit Gundam in comic (Vol.7)』で、批判的な読者投稿でつかわれている表現。投稿全体に対してだが、「実をいうと東スチャ内でも同様の意見が出ている」と採用側も応じている。135頁。

*8:輸入品の名称で確認できる。TB海外US MIA バーニングガンダム (Gガンダム ゴッドガンダム)