法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season17』第1話 ボディ

国家公安委員会で、委員のひとり三上冨貴江の携帯に呼び出しがかかる。画面には義父の名前が表示されていたが、実際に出たのは夫だった。
やがて三上の義父が行方不明として届けられ、警察は特別な便宜を図ろうとするが毅然と断られる。それに不審をいだいた特命係が動き出し……


シーズン初回なので1時間半に枠を拡大して放映。
上記のあらすじでは明記しなかったが、実際のドラマでは序盤で義父の死体が映しだされ、自身が犯人だと夫が三上に告白して、しぶしぶ三上が協力を決めるまでを描いている。
いわゆる倒叙ミステリとしてドラマが進行していくわけだが、さすがに三上は国家公安委員らしくたちまわるものの、実際に殺した夫や、義父の若妻は考えなしに動き、あっさり写真週刊誌に尻尾をつかまれ、特命係に決定的な心証を与えてしまう。その後も、杉下が意外なかたちで手がかりをつかむことも、違う真相に誤誘導されることもなく、終盤までミステリとしての面白味は感じなかった。
興味をひかれたのは、鬼束家の一族経営による学園の政治力から、その家族の愚かな行動による破綻、政府と近いがゆえに図られる便宜などの、加計学園を連想させる風刺性。その疑念を最初に報じたのが俗悪な写真週刊誌で、その記事が暗に読者を誘導する書きぶりな問題を指摘するあたりで、権力批判にとどまらない留意をしたことには感心した。


また、鬼束家の巨大屋敷こそドラマでよく見かけるものだが、その庭にそこそこ大きな離れ屋を基礎から建築するという予算の使いっぷりには日本のドラマ離れしたものを感じた。
さらに死体が隠されているという疑いから、重機を運びこんで完全に破壊することがクライマックスとなる。なかなか普通の刑事ドラマではお目にかかれない派手な情景に、つい笑ってしまった。
そして、そこまで手間をかけているからこそ、逆に死体が隠されていないのではという印象も生まれた。直前に杉下が首をかけた描写も、その印象を支える。


実際、残り時間がないところに死体が見つからないままドラマは終了。離れを壊すブラフで別の場所に隠された死体を見つける展開かと思いきや、今回は前編にすぎなかった。
今回だけでは謎解きミステリとしての面白味を感じないことに変わりはないが、盛りあげるだけ盛りあげて肩透かしにするオチは次回への興味を引かせるに充分だ。