法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

米国大統領選を世帯収入で見ると、ドナルド・トランプ氏の支持が過半数を超えたのは10万ドル以上だけ

日本で年収600万ほどの未婚者と自称する匿名記事が、大統領選でジョー・バイデン氏が支持されたことを悲しんでいた。
日本人としてバイデン勝利を悲しむ

アメリカという国のありとあらゆるインテリや金持ちやエスタブリッシュメントがバイデンについた。

彼等はトランプを支持するような粗野で垢ぬけず育ちが悪く学歴の低い田舎者をまとめて卑しむ。

私は日本の貧しい田舎町から抜け出してなんとか今は年収600万程の仕事をしている。結婚はあきらめた。


ここにニューヨークタイムズ出口調査がある。もちろん調査に限界があることは最初に断りがあるが、興味深い情報であることに間違いない。
Election Exit Polls 2020 - The New York Times
トランプ氏とバイデン氏に投票した人々が*1、それぞれどのような集団に属するかを調べ、その比率を赤青の濃淡で視覚化した記事だ。もちろん有権者における各集団の比率も明記されている*2
たとえばトランプ氏を過半数支持した人種は白人だけ。白人の有権者比率は65%と高いが、そのトランプ支持率も57%にとどまる。他の人種のバイデン支持率は87%から58%と、より強い支持がある。
年齢は若いほどバイデン支持率が高く、トランプ支持率が過半数を超えているのは有権者22%の65歳以上だけ。


そこで大卒者*3は55%がバイデン支持だが、非大卒者は両者の支持が49%と拮抗している。人種ごとに見ると白人大卒者は両者の支持が49%と拮抗し、白人非大卒者は64%がトランプ支持で、非白人はどちらも70%以上がバイデン支持。どちらにしても非インテリや低学歴者がこぞってトランプ支持にまわっているようには見えない。
現在に結婚している人間*4は54%がトランプ支持で、独身者は57%がバイデン支持。結婚と年齢の相関もありそうだが、安定した家庭をきずいた生活保守者がトランプ支持にまわっていると感じられる。
そして世帯収入でいうと、有権者35%の5万ドル未満で57%がバイデン支持、38%の5万ドル以上10万ドル未満が56%バイデン支持、28%の10万ドル以上が54%トランプ支持という結果になっている。ちなみに有権者59%の正規労働者*5は50%がトランプ支持で、48パーセントのバイデン支持よりやや多い。
もちろん収入には人種や性別との相関なども背景にあるだろうが、金持ちやエスタブリッシュメントがバイデン支持にまわったという匿名記事の印象論は当てはまらない。


この出口調査から見えてくる典型的なトランプ支持者は、10万ドル以上の安定した世帯収入をもつ既婚者の白人という姿が浮かんでくる。こうなると学歴についても、非白人ほど切実に必要としない社会階層のようにも見えてくる。
もちろん上記の想定した典型に当てはまらない支持者はそれぞれに多数いるし*6、この出口調査ひとつで米国の有権者の全体像がわかるとも思わないが、最初の匿名記事はトランプ支持の実態をとらえているとはいいがたい。

*1:厳密には他にも立候補者がいるが。

*2:印象で誤解をまねかないよう、各集団の比率も面積で視覚化すれば、より良い記事になったと思う。

*3:「College graduate」

*4:ちなみに18歳以下の子供が家庭にいるかという問いでは、いてもいなくても少しバイデン支持率が高いが、子供がいるほうが支持率が高い。子供がいても自立する年齢なのか、逆に一人親家庭なのか、他の問いと比べてもよくわからない。

*5:「Do you work full-time for pay?」 また、現在の経済状況を4年前より良くなったと答えた集団や、国全体の経済状況が優れていると考える集団ほどトランプ支持が高いが、これは現職を支持する理由として理解できる。

*6:ひとつ興味深いのがBLM運動で、有権者の大多数でこそないものの過半数の57%が好ましいと答えつつ、その好ましいと答えた集団の20%がトランプ支持にまわっている。黒人が選挙に参加しづらい状況がBLM運動の一因であることから、米国全体のBLM運動支持はさらに高いことが想像できる。