突如として宇宙レベルの災害が起こり、対処しようとしたガミラス帝国のデスラーは行方不明になった。その調査にむかったヤマトもさまざまな災害に遭遇する。そして移動する水惑星アクエリアスのひきおこした洪水から、敵となるディンギル帝国の母星にのこされた人々を救出するが……
1983年のアニメ映画。映画2作目『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』*1からタイトルに反する復活をくりかえしてきたシリーズだが、この作品から1995年のリメイクOVAまではアニメ新作がつくられなかった。
2時間半以上の尺で休憩なし、シーンの転調はナレーションですまされ、ダイジェスト感がひどい。かわりに退屈なドラマパートが少なくて災害や戦闘が間断なく描写されるのでディザスター映画としては意外と楽しめるが、いくらなんでも物語の厚みがなさすぎる。弱者を切り捨てる敵の文化が語られながら、切り捨てられた少年がドラマの主軸にからまない。長期間かけたシリーズの蓄積を感じようにも、死んだはずの艦長が誤診だったと説明されて復帰し、最後に単身で特攻で再び死ぬような展開に重みはまったくない。
2時間半くらいでエンドロールが始まり終わったかと思えば、そこから十分以上も台詞のないイメージ的な描写がつづくのも唖然とした。娯楽作品としてはエンドロール後はばっさり削除するべきだろう。映像特典に入っている古代と森のラブシーンは、森の顔面がクローズアップで動くカットばかりなので、良くも悪くも十八禁な感じではないが、映像としての面白味もない*2。
絵コンテは意外とメリハリがしっかりしていて悪くない。メカを見せる構図は俯瞰などで斬新なものが散見されるし、貧乏ビスタならぬ貧乏シネマスコープのレイアウトも映画らしさがある。枚数の多いなめらかな動きもあって東映動画の初期作品を思わせる古さは感じたものの、結果として時代をこえている。序盤に死んだと思ったデスラーの姿が空に映る演出だけはさすがにギャグだが。
作画面では、なぜか全体的にヤマトのフォルムが太く短いが、動きのがたつきなどは少ない。金田伊功が作画監督と原画を担当していて、メカ戦闘はところどころ良いところがある。設定面で水流の多い物語において、作画枚数をつかって水流エフェクト作画を多用するところは悪くない。
全体的にキャラクター作画も安定している。移動の奥行きを表現するため、レイヤーごとに拡大縮小率を変える手法をアナログで多用しているところも目を引いた。けっこう撮影で当時なりに面白いことをやっている。
しかしDVDで視聴したが、画質がところどころビデオテープのように異常にひどい。途中までは演出的な処理のためかと思ったし、事実として一部の劇中モニター映像はデジタルっぽい先駆的な処理がおこなわれているが、どう考えても前後と違和感を出すべきでないカットも同じように画質が落ちている。マスターが散逸したのだろうか。
*1:『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』 - 法華狼の日記
*2:ただ、この映像をふくめたバージョンは『涼宮ハルヒの消失』とほぼ同じくらい上映時間が長いので、一応はアニメ史における価値はあるか。 hokke-ookami.hatenablog.com