法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『うる星やつら オンリー・ユー』

 幼年時代に、諸星あたるが謎の少女と約束をかわしていた。そして学生になったあたるは、異星人のラムに求婚されながら他の女に粉をかける毎日をすごし、ラムを愛する終太郎たちに嫉妬され激怒されていた。
 そんなある日、エルという謎の女性とあたるが結婚するという招待状がばらまかれるが、あたるも何も知らない。そしてあらわれた巨大な宇宙船から異星人の女性が降りたち、あたるに対して女王エルと結婚するようにつげたが……


 高橋留美子原作の人気アニメ映画シリーズの1作目で、1983年に公開された。もとは別の監督が担当していたらしいが降板し、TVアニメ版で初監督をつとめている押井守が並行して短期間で完成。結果的に押井守初監督映画となった。

 ここ最近にいくつか感想を書いている1983年のアニメ映画群のひとつだが*1、実はリメイクTVアニメ化を機に、一年くらい前に二十数年ぶりにDVDで再視聴していた。
 はっきり記憶していたのは謎の手紙を終太郎にとどけようとするアバンタイトル*2、中盤の宇宙船にクラスメイトが雑多に乗りこんでいる情景と、終盤の解凍男たちのモブ作画くらい。最後の最後に明かされる真相は視聴中に思い出した。
 山下将仁のメカニック監督と上妻晋作の原画が全編あばれまわり、作画の見どころは多い。絵コンテはこっているがアクションは少ない『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』よりも漫画映画としては楽しい。モブシーンも全体的によく動く。キャラクターデザインは古いが、当時の原作者の絵柄にあわせているのでしかたないか。
 あらためて見ると、歩きつづけるエルを従者が着替えさせる描写や、無理やりな結婚を止める構図など、全体が『ルパン三世 カリオストロの城』のパロディのようでもある。序盤の時計塔のなかで回りつづける歯車もそうだ。


 ただ、やはり映像も物語もTVSPか、せいぜい同年に半年後から媒体として生み出されたOVA*3くらいの印象だ。
 途中で千両役者のように登場する弁天など、原作やTVアニメを知っていることを前提にしたようで、結婚式にむけてキャラクターを勢ぞろいさせる展開ともども典型的なファンムービー。
 先述の『カリ城』のように既存の映画をパロディしたようなカットこそ多いが、時間の流れと空間の広がりをコントロールする映画らしさが薄い。観客を飽きさせないよう小ネタがつめこまれているが、結果として全体をとおすと起伏がちいさくて単調になっている。東映動画の漫画映画的。長編娯楽作品としてこれはこれで正解だとも思うが。
 ただ映画らしさを感じられないのは、DVDはスタンダードサイズで収録されていることも一因だろう。テロップなどを見ると、明らかに上下を切ったビスタサイズで上映されることを前提にしている。ためしにビスタサイズになるよう拡大して視聴するとキャラクターの頭上の無駄な空間がなくなり、舞い散る桜の作画もリピート目立たなくて、やはりビスタサイズで視聴することを前提にしていると感じた。
 ちなみにBlu-rayBOXではビスタサイズにトリミングされているらしいが*4、モニター側でサイズを変更しやすい現在なら映像ソフトにはスタンダードで収録したうえで、視聴者に拡大視聴を推奨する方向が良いのではないかと思った。

*1:こちらのコメント欄でも言及した。 『幻魔大戦』 - 法華狼の日記

*2:とはいえ記憶ではもっと背景動画が長かったが、別作品と記憶が混濁したのだろうか。

*3:その世界初のOVA押井守が共同監督である。 『ダロス』 - 法華狼の日記

*4:押井守と縁が深い荒川直人氏は効果を疑問視していた。