法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ニニンジャ!からくり忍者屋敷/友だちの輪

アニメオリジナルの前半と、原作そのままの後半と。コンテはどちらも寺田和男で、前後とも古典的なワイプで番組を閉じる。作画監督は嶋津郁雄なので、普通に安定しているが突出もしていない。


「ニニンジャ!からくり忍者屋敷」は、残されていた忍者ロボットをのび太が起動して、ジャイアンを倒したり、留守番をまかせたりする。しかしロボットは暴走の危険があった……
秘密道具に不具合がある定番の展開だが、アニメオリジナルストーリーでは珍しい。未来デパートから回収者が登場するのは原作でも滅多にない。さんざん秘密道具が暴走しながら野比母が大活用して終わるという原作にたまにあるオチも、アニメオリジナルストーリーでは見たことがない。
ただ上述のようにアニメオリジナルストーリーでは珍しいパターンというだけで、あまり展開は工夫されていない。次々に忍者の罠が発動するが、思いつきをならべただけのように見える。家族まで敵とかんちがいするのならともかく、指示したのび太をも知らない人にふくめて攻撃するにいたっては、脚本レベルの整合性がとれていない。
そもそもロボットが暴走して身内まで攻撃することと、家が忍者屋敷になることが、うまくつながっていないと感じる。指示通りにふるまうロボットと、家を大幅に改造するのは、秘密道具の性質が違うのではないか。扉をどんでん返しにするような大きな改造ではなく、個人が可能な範囲の罠をしかけるとかの展開にするべきだったと思う。


「友だちの輪」は、シートの上に乗った人間と仲良くなれる秘密道具が登場。それでドラえもんが猫をガールフレンドにしていたのを見て、のび太は神成家の少女と仲良くなろうとする……
福圓美里の演じるミズエが原作を超えてかわいらしい。髪のハイライトを毛1本ずつ輝かせる作画は、このTVアニメでは珍しい描写だ。主人公たちの顔面をクローズアップして、のぼせている状態を強調したコンテも良かった。
ほぼ原作通りの展開だが、同じように原作に忠実だった2005年版のオチの断ち切りが印象だったので、比べると平凡な印象。ただ、のび太たち3人が建前を装いながら本心がだだもれる姿が、原作よりも今回の映像化で強く感じられて、心配して守ろうとする神成さんの心情が理解できた。