まず個別の冤罪事件として、多くの証拠に捏造の可能性を指摘する踏みこんだ内容だったらしい。
袴田巌さん再審で無罪判決 地裁、自白調書など三つの証拠捏造認定:朝日新聞デジタル
判決は、「自白」した供述調書や犯行着衣とされた「5点の衣類」など三つの証拠捏造(ねつぞう)がある、と認定した。死刑が確定した事件で再審無罪となったのは戦後5件目。
上記の朝日記事は途中までしか読めない有料記事だが、朝日は時系列などの数字を視覚化した力の入った特集ページも用意している。
袴田巌さん 58年後の無罪 なぜ死刑囚にされたのか:朝日新聞デジタル
さらに弁護団の戸舘圭之氏が指摘するように、警察による調書そのものが原理的に証拠能力が低いことを指摘する画期的な判決でもあるようだ。
今日の袴田事件無罪判決、供述調書に関するこのくだりがすごくいい!! pic.twitter.com/JJuiBTFUfJ
— 弁護士戸舘圭之【袴田事件弁護団】 (@todateyoshiyuki) 2024年9月26日
それにしても悪名高い味噌樽の着衣などの証拠によって死刑が確定したのは1980年のこと。その判決から再審請求が却下されたのが2008年。死刑執行が停止され釈放されたのが2014年。
長きにわたる袴田氏と関係者の苦しみは大変なものだったろうが、それでも袴田氏が生きているあいだに再審無罪にまでたどりついただけでも、意味があったと思いたい。
もっとも、死刑制度を維持したい人々にとっては、死刑でも他の刑罰でも冤罪が回復できない重みは変わらないらしいし、それでいて死刑は他の刑罰よりも犯罪を抑止する重みを感じさせるらしいが*1。
*1:「死刑存置の立場」の3と4を参照。参照元が同一資料であることにも留意。 https://www.moj.go.jp/content/000053167.pdf