法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ヒーリングっど♥プリキュア』第1話 手と手でキュン! 二人でプリキュア♥キュアグレース

花村のどかは両親とひっこしてきたばかり。さっそく市内を散歩して、元気な少女やスポーティな少女と出会い、困りごとから助けようと手をさしのべていく。
一方、ビョーゲンズという敵にたちむかうため、妖精たちも肉球に導かれて市内を動きまわっていた。そして怪物から犬を救おうとした花村は、妖精と出会う……


シリーズ初の女性シリーズディレクターとして、『スイートプリキュア♪』の映画版*1を監督した池田洋子が登板。約十年前に『怪談レストラン』*2や『ねぎぼうずのあさたろう*3といった長期TVアニメを連続して担当していたし、長期シリーズをまわす能力は充分あるだろう。
他にスーパー戦隊の活躍が印象的な香村純子がシリーズ構成、若手作画監督としてシリーズを支えてきた山岡直子が初キャラクターデザイン。さらに音楽の寺田志保など、メインスタッフの大半を女性がしめる。
このシリーズは少女のエンパワメントが主題のひとつであったし*4、アニメ業界比では女性がメインスタッフとして活躍してきたが、ここまで役職の大半をしめたことは初めてだ。
シリーズが国際女性会議で高評価された時、パネルディスカッションに登壇した初代プロデューサーが男性だったことを思い出す*5。完成作品の評価はまた別として、創作の現場でジェンダーバイアスを変化させる試みをしているのならば興味深いことだ。


それで実際の作品だが、本編からOPEDまで驚くほどオーソドックスにまとめていた。少なくとも1話目にかぎっては、きわめて平均的で無難に段取りを処理して、主人公の設定説明から登場人物が出会い、変身から敵を倒すまでを自然に説明した。
主人公の花村が動けるようになったのは最近らしく、それゆえ他人を助けたいと無理に動いて能力が追いつかない。後にプリキュアになるだろう少女たちの性格も、花村との対話で感じさせていく。花村と並行して妖精たちの市中冒険を描いて、コミカルな言動とキュートな情景でプリキュアパートの物語を動かし、花村との出会いをドラマのピークにする。
全体的に作画は整っているし、柔らかな彩色も心地いい。冒頭の家屋のパースを直線で写実的に感じさせたり、樹木をなめて見あげる構図で怪物の巨大感を正確に描いたり、表現主義的ではない実写的な演出がシリーズでは珍しく、逆に個性的になっている。


ここ数年はシリーズ1作ごとにビジュアルからストーリーまで目新しい部分をどこかに用意していた。それを考慮して、もっと新しさがあるかと期待していた。もっともスタッフが想定する主要視聴層は、斬新でないからといって低評価はしないだろうが。
より大きな問題として、段取りがていねいすぎて、後半は評価に困るところがあった。アイテムによる変身を妖精と協力するドラマに組みこみ、敵を倒してから妖精を治療する描写でもアイテムを活用……そうしてアイテムの重要性をしっかり説明するほど、販促番組らしさが前面に出てしまう。
しばしばアイテムの位置づけをとってつけたように描写してきたことは、過去のプリキュアシリーズでは難点と思ってきた。しかし販促番組らしい押しつけを弱めるためには効果的だったのかもしれない。たぶん同じようなアイテム描写でも、それが定番のスーパー戦隊なら気にならなかったろう。
あと、プリキュアへと導くための肉球をペンギンがもつ設定は……いや会話ができる時点でペンギンではないし、あくまでペンギンに似た妖精ではあろうが……