法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『怪談レストラン』怪談レストラン最初の客

この23話にて最終回。普通の2クールには少し足りないものの、いくどとない特別番組による放送延期を考えれば、よく長く放映してくれたと感じる。夏に劇場版がひかえていることもあり、しめやかな最終回でありながら適度な気軽さも感じられた。


演出はシリーズディレクター池田洋子、脚本はシリーズ構成の米村正二作画監督はキャラデザインの高橋晃という布陣。
今回の物語は夜の学校探検と死者との再会を描く、オーソドックスな子供向け怪談だ。しかし構成が予想していたより緻密で意外な伏線が回収され、レイコの意外でいて納得できる背景と成長が描かれてキャラクタードラマとしても楽しめた。
まず冒頭の無言な朝食風景からして雰囲気が出ているし、いつもの学校へ明るく物語を転調したかと思うと、オバケ屋敷のような軽い怪談描写を重ねてテンポ良く楽しませてくれる。
後半に入るとシリーズ初回で描かれた怪談レストランへ舞台を移し、初期のED映像が一種の予知夢であったという描写もなされる*1
そしてレイコが海水浴で兄を亡くしたこと、そのことで両親から責められたことが描かれる。4話前の「あの世の旅のご案内」で、レイコの両親が寺へ多額の寄付を行っているという描写があったが、あれも若くして息子を亡くしたからという伏線だったのかもしれない。超常現象を求めるがゆえに否定していたというレイコのキャラクターにはハリー=フーディーニを思い起こさせ、視聴者の間で冗談半分に語られていたアンコへの思慕も確定した*2
単独で見てもプールの描写で水辺の恐怖が描かれていたり、学校探検に来ない者で息抜き的な笑いをとったり、娯楽としての目配りも確かだ。
シリーズ全体の描写が収束する、いかにも最終回らしい満足感がある話だった。


何度も番組フォーマットを変更したりして*3制作体制に不安を感じさせたが、ひさびさのゴールデンタイム全国ネットの新作アニメとしては視聴率も上々で、後番組に『デジモンクロスウォーズ』*4が入るほどとなった。アニメ放映枠が全国的に消えていっている中*5、ほぼオリジナルの玩具展開すらないアニメ*6で成功をおさめたこと自体を評価したい。
いささかホラーとしては薄味な描写が多く*7、もともと枠の放映時間が短い上にオムニバス形式であるため時間の制約を感じる話も多かったものの、多彩な物語が展開されたので良くも悪くも新鮮に毎回を楽しむことができた。放映延期もあってか、子供向けTVアニメとしては驚くほど作画が安定していたことも印象に残る。

*1:後付けで伏線に仕立て上げたのではないかという気もするが、水辺と恐怖の親和性という意味で一貫性があるという評価はできるだろう。

*2:存在感がないシュウに『神無月の巫女』を思い出したというのは冗談だが、サブヒロインのドラマにおいてヒロインへの思慕を描くことで、ちゃんと主人公の存在感が出ているところはうまい。

*3:初期ED終了と同時にフォーマットを次々に変えていたので、もしかしたらタイアップ主題歌との契約問題がからんでいるのかもしれないが。

*4:http://www.toei-anim.co.jp/tv/digimon_xw/シリーズ構成の三条陸に期待。えんどうてつや監督も東映での各話演出は良い仕事が多い。

*5:過剰な制作本数が整理されているという面では全否定しにくいが。

*6:原作は定番のホラーを雑多に集めたシリーズであり、アニメとしての魅力はやはりアニメオリジナルキャラクターによる面も大きいだろう。

*7:スポット的に参加した古賀豪演出回が突出して良かったくらい。