法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『プリンセスコネクト!Re:Dive』雑多な感想

 サイゲームズの同名ソーシャルゲームを原作とするTVアニメ。2020年放映の1期を視聴。

 シリーズ構成や音響監督を兼任する金崎貴臣監督が第7話まで単独脚本コンテを連続しているところがすごい。いったん第8話を別スタッフにまかせてからも、脚本は最終話までふたたび連続で単独担当、絵コンテも第10話から最終話まで単独か共同でクレジット。
 よほどスケジュールに余裕があったのかと思いきや、Blu-ray特典の第1話アフレコ用映像を見ると絵コンテや原画の絵が乱舞する線撮なので、良くも悪くも現代の平均的なTVアニメか、やや厳しそう。むしろ他スタッフと意識共有する時間を節約するための連続登板だったのかもしれない。


 ともかくライトなファンタジーアニメとして安定して楽しめる良作だった。作画はサイゲームズ原作のTVアニメとしては力を入れすぎず、かといって手抜きもせず、全体をとおして上位で安定している。ゲームらしい過剰な装飾はアニメらしく簡素化しつつ、アクションはグリグリ動かして楽しい。
 タイトルや上位存在の言動から仮想世界のような印象はありつつ、とりあえずは気楽な物語がつづく。食事にこだわり楽しむ少年少女が周囲を助け助けられて生きていく。キャラクターの善良さの水準が高くて、メインキャラクターは他者への奉仕が行動基準でありながら、秘密を隠していたり異常に天然だったりして、ディスコミュニケーションが笑いをさそってコメディになり、葛藤をつくりだしてドラマを生む。
 そうして世界のとらえかたがまったく異なるのに、男1人に女3人というメインキャラクターのチーム構成や、カット割りや構図、デフォルメキャラのアイキャッチ、表情などで神崎監督の代表作『この素晴らしい世界に祝福を!』と似た画面にしあがっていることも面白い。
 普通なら主人公に位置するだろう少年が朴訥で反応がにぶく、動きでドラマにかかわるという意味ではアニメという表現手法の魅力を存分にひきだしているところも好印象。そもそもメイン4人では最後にクレジットされているのでTVアニメにおいては主人公ではないのだろうとは思うが。結果としてチーム内でデレツン百合カップルと主従カップルが成立してハーレム感がうすれ、それも見やすさにつながっている。モブの庶民や悪党も善良さの水準が高いおかげで力強く、きちんと社会をささえる一員として存在感がある。
 ライトなファンタジーだが、第5話の異様な病院からホラーめいた描写も多くなる。特にシャドウという謎めいた人型の存在が白昼堂々と人々をおそいはじめるあたりは金崎監督のシリアス演出のうまさを感じさせた。