法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』一寸のび太の鬼たいじ/お医者さんカバン

タイトルバックが変更。リニューアル初期のようなドラえもんのクローズアップに戻したのかと思ったが、後半はのび太の顔アップに切りかえ。よく見ると画材も違うようだ。


「一寸のび太の鬼たいじ」は、さまざまな絵本になぞらえた体験をできる秘密道具が登場。のび太はまず『おむすびころりん』を試し、次に『一寸法師』を試すが……
原作に登場する秘密道具「おはなしバッジ」*1を、絵本の種類だけ変えて、まったく展開の異なるアニメオリジナルストーリーをつくりだした。秘密道具の整理という発端も原作から引いており、見ていて違和感がない。おなじみの秘密道具を組みあわせて絵本そっくりの状況に巻きこまれていく過程も、しっかりピタゴラスイッチのように考えられていて、感心しながら変転する状況を楽しめた。
同時に、アニメオリジナル恒例となったミニサイズ冒険譚としても成立している。子供のままごとの人形あつかいされる場面など、影をグラデーション処理して子供の巨大感を表現しており、最初のミニサイズ冒険譚「そして、ボクらは旅に出た」*2を思わせる。
しかも季節ネタをおりこんだ物語にもなっている。おむすびが熱々だったため落としてしまったことから『おむすびころりん』が始まったわけだが、それが関係ない物語のはずの『一寸法師』で冷たい水でひどい目にあうギャグにつながり、ダジャレオチの伏線にまでなっている。登場する鬼が節分イベントに関係あるところまでは予想できるからこそ、予想を超えた細部まで作りこんだことが印象に残った。


「お医者さんカバン」は、あらゆる病気を実際に診断して即効で治療できる秘密道具が登場。のび太は自身の体調不良を治した後、しずちゃんの診察をしようとするが……
原作に時々あるアダルティなエピソードのひとつ。男子が女子をお医者さんゴッコで脱がしたがる愚かしさがなんともいえない。もちろん成功などせず、自業自得としかいえないオチにいたるわけだが……映像に特別な見どころもなく*3、原作を超えた面白味がなかったのは残念。
ちなみに今回は三上喜子という、おそらく女性演出家が映像を手がけていることも興味深い。以前に演出で参加したことは一度あるが、コンテ演出は初めて。視聴者への性的アピールをしないかたちでセクシャルな描写がされるエピソードほど女性演出家が手がけるという傾向を感じているが、今回もその例にもれない。